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ガソリン高騰160円! まだ上がるってホントか? もうドライブどころじゃない エコノミスト6人が分析(2)

   「緊急事態宣言が開けて、やっとドライブに行けると思ったのに...」

   行楽シーズンを迎え、家族の楽しみに水を差すかのようにガソリン代が高騰している。

   2021年10月4日には全国平均でレギュラーガソリンが1リットルあたり160円(石油情報センター調べ)になった。

   いったい、なぜこんなに上がっているのか。これからも上がり続けるのだろうか。エコノミストたちの分析は――。

  • 緊急事態宣言の解除でドライブを楽しむはずだったのに(写真はイメージ)
    緊急事態宣言の解除でドライブを楽しむはずだったのに(写真はイメージ)
  • 緊急事態宣言の解除でドライブを楽しむはずだったのに(写真はイメージ)

世界的なインフレが起こり、景気回復に冷や水?

   第一生命経済研究所主席エコノミストの西濵徹氏は、原油価格の高騰が世界的なインフレを招き、回復傾向にある世界経済に冷や水を浴びせる恐れを心配する。

   「OPECプラス、11月も日量40万バレルの協調減産縮小を維持~国際原油価格は上値をうかがう可能性の一方、世界経済に冷や水を浴びせる懸念にも要注意~」(10月5日付)で、こう指摘した。

「足元では世界的な新型コロナの新規感染者数は頭打ちする動きがみられるものの、OPECプラスの国々は欧米など主要国で変異株による感染再拡大の動きがみられるなか、今後の再拡大を警戒して大幅な増産に動くことに消極的になっているとみられる。また、OPECプラス内においては、例年において年末にかけて原油需要に下押し圧力が掛かる傾向があることを理由に様子見を図りたいとの思惑も影響したと考えられる。
世界的な原油需給は当面ひっ迫が意識されやすい局面が続くと予想され、結果的に国際原油価格は一段の上値を試す可能性が高まっている。他方、国際原油価格の上昇に伴い世界的にインフレが顕在化するなど景気に冷や水を浴びせる懸念も高まっており、今後は感染動向やそれに伴う世界経済の行方に国際金融市場が揺さぶられるとともに、国際原油価格も左右されることも考えられる」

   インターネット上でもさまざまな懸念の声が出ている。ヤフコメでは専門家たちから人々の暮らしへの影響を心配する意見が相次いだ。

   第一生命経済研究所首席エコノミストの永濱利廣氏は、こう指摘した。

「仮に今年度後半の原油価格が(1バレル当たり)平均80ドル程度で推移すれば、2021年度後半から1年間の家計負担をプラス2.8万円も増加させる計算になりますので、足元の原油高が持続すれば家計に無視できない悪影響を及ぼすでしょう。
また、今年の経済成長率をマイナス0.24%ポイントも押し下げることになりますので、足元の原油高が持続すれば、マクロ経済的に見ても無視できない悪影響を及ぼします。足元では、緊急事態宣言解除により消費者心理は大きく改善していますが、今後の個人消費の動向を見通すうえでは、原油価格の高騰を通じた負担増が遅れて顕在化してくることにも注意が必要でしょう」

行楽シーズン、クルマの遠出を控える人も

原油高の煽りを受ける石油精製所
原油高の煽りを受ける石油精製所

   金融アナリストの久保田博幸氏も、こう警戒する。

「原油価格のベンチマークともいえるWTI先物(編集部注:ニューヨーク商業取引所で取引されている米国の代表的な原油の先物商品)は(1バレル当たり)77ドル近辺の壁を超えそうで超えなかったが、そこを10月4日に突破してきた。次の節目は100ドル近辺となる。今回の原油価格の上昇の要因としては有力産油国による大幅増産見送りが決定したことなどがあるものの、それ以前に世界的なエネルギー価格の高騰が背景にある。
経済活動の回復に伴い電力不足など起きており、石炭や天然ガスの価格が急騰している。このため原油価格にも上昇圧力が加わってきた。今後もさらに原油価格が上昇してくることが予想されるため、ガソリン価格も上昇してくる可能性が高いのではなかろうか。これは当然ながら家計にも影響を与え、物価そのものを押し上げる要因となりそうだ」

   三菱UFJリサーチ&コンサルティング調査部主席研究員の小林真一郎氏は、こう予想する。

「昨日(10月4日)の米国市場で原油価格は1バレル=78ドル台と約7年ぶりの高値をつけており、今後もガソリン価格の上昇が続くと予想されます。また、原油価格の上昇は、時間差をおいて電気代やガス代の値上がりにつながります。今年8月、全国の消費者物価指数は前年比で0.4%の低下と落ち着いていますが、携帯電話通信料の値下げの影響などで大きく押し下げられており、ガソリンなどエネルギー価格は前年比で5.5%の上昇と大幅に値上りしています。
家計の購買力は物価上昇分を差し引いた実質の所得で決まるため、物価が上昇すれば、個人消費が抑制される心配があります。特に、自動車の利用が多く、ガソリン消費量も多い大都市圏以外の地域での負担が高まります。また、緊急事態宣言が全面的に解除され、これからの行楽シーズンに自動車で出かける予定だった人にとって、ガソリン価格上昇は痛手であり、遠出を控えるケースも増えそうです」

(福田和郎)