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悩み多き自炊男性へ 野菜はレンチンして保存しよう! いろいろ応用が利きます【食品のムダをなくす一冊】

   10月は「食品ロス月間」。冷蔵庫の活用術や、食材やお料理の節約術、最新の農業事情などをテーマにした本を随時、紹介していこう。

   食事づくりを配偶者に任せている男性は多いだろう。だが、さまざまな事情で自炊している男性も少なくない。そんな彼らにとって悩みのタネなのが、冷蔵庫に入れた食材を傷めてしまうこと。特に精神的にダメージが大きいのは、野菜をダメにしてしまうことだ。

   健康のためにと野菜をせっかく買ってきたのに、くたくたにしてしまい、ゴミとして出す。その時、自分のダメさ加減を痛感し、二度とこんなことがないようにと誓うのだが......。本書「賢い冷蔵庫」(NHK出版)は、食材を長もちさせ、むだにしない知恵を集めた本だ。男性だけでなく、女性にももちろん役立つこと間違いない。

「賢い冷蔵庫」(瀬尾幸子著)NHK出版
  • 冷蔵庫にたくさんの野菜、なかにはダメにしてしまうことも……
    冷蔵庫にたくさんの野菜、なかにはダメにしてしまうことも……
  • 冷蔵庫にたくさんの野菜、なかにはダメにしてしまうことも……

「つくりおき、下ごしらえ」で後が楽になる

   著者の瀬尾幸子さんは料理研究家。手早くつくれて、食べ飽きない「ふだんのおかず」を得意にしている。手がかからないのに、素材の持つ本来のおいしさをグッと引き出す方法は、幅広い年代から指示されている。

   本書で紹介した手法は、著者本人の日々の暮らしの中から編み出されたものである。

   せっかく買った材料をムダにするのが怖くて、料理に手を出せない人がいる。余った材料を絶対にむだにしない。そんな方法を瀬尾さんが伝授している。

   キーワードは「つくりおき、下ごしらえ」。素材を買ってきたらすぐに、いろいろ使い回せる下ごしらえを、いっぺんにやっておくのだ。そうすれば一から料理をしなくてもいい。野菜や肉には火が通っているから、あとは仕上げをするだけだ。

   最初に登場するのが「レンチンにんじん」。作り方はこうだ。皮をむき、太めのせん切りにする。次に耐熱容器に入れ、水大さじ1をふる。最後にラップをしてレンチンし、汁ごと保存する。保存の目安は冷蔵庫で5日間程度。

   レンチンすると、にんじんが驚くほど甘くなり、ほどよく柔らかくなる。ゆでるのに比べて栄養素が流出しにくくなる。生ハムで巻き、粉チーズとオリーブ油、黒こしょうをふるだけで、おもてなし料理にもなる。パンケーキや炒飯にも使える。

   カレーの材料にと買い、ダメにしてしまうのが、たまねぎだ。にんじんよりずっと早くダメになる。瀬尾さんが紹介しているのは「たまねぎマヨネーズ」。たまねぎを5ミリ角に切る。マヨネーズと混ぜるだけ。5分間おいたら保存する。目安は冷蔵庫で1か月。

   たまねぎの辛さが抜け、フライにかけて食べるだけで自分の味になる。ソースやしょうゆとダブルでかけても、しつこくならない。ごはんにかけてもいい。本書では、チキン南蛮、たまマヨ納豆丼などのレシピも紹介している。

瀬尾流パクチーのしょうゆ漬け

   野菜関係では、このほかにキャベツ、にら、セロリ、ピーマン、ゴーヤー、トマト、きゅうり、パクチー、なす、かぼちゃ、きのこ、ほうれんそう、白菜、大根、もやしの簡単な保存法を取り上げている。

   どれもダメにしたことがある野菜ばかりだ。「ごめんなさい」と慙愧の念を抱きつつ、ありがたく拝読した。

   たとえば、きゅうり。夏場だと冷蔵庫に入れておいても、けっこう早くダメになる。薄い輪切りにして、塩をふり、しんなりしたら絞らず汁ごと保存容器に入れ、冷蔵庫で保存するだけだ。あえ物や炒め物のほか、パンにはさむだけでもうまいそうだ。

   パクチーは高いので、安く売っているのを見つけるたびに買う。でも、すぐにダメになってしまう。そのたびに後悔する。瀬尾さんもいろいろな方法を試した結果、「これだ!」と編み出したのが、しょうゆ漬けだ。根を切り落とし、茎と葉はザク切りにする。瓶につめて、パクチーがつかるくらいまで、薄口しょうゆを入れる。最後に根は刻まずに漬ける。

   厚揚げを焼いた上にのっけたり、鶏もも肉を使ったカオマンガイの付け合わせにしたりするレシピを紹介している。本書のとおりにつくってみた。そのまま食べても美味しいし、何にかけてもパクチーの風味がして、楽しめた。

   本書は野菜ばかりではない。このほかに、ひき肉や薄切り豚肉、鶏もも肉、いわし、たらこなどを使ったレンチン料理を紹介している。

   「これはよさそうだ」と思ったのは、「マヨたらこ」だ。たらこの薄皮から中身を書き出し、マヨネーズと合わせて混ぜるだけ。10日間ほどもつという。「そのままパンに塗ってもよし、肉や野菜をあえてもよし、調味料代わりに炒め物に使ってもよし、特に豆腐や鶏むね肉など、淡白な食材と合わせると、まろやかなコクと食べごたえが出ます」とイチ押しだ。

   マヨネーズの主成分は油なので、生でそのままおいておくよりも、長もちするという。

余った食材はしょうゆに漬けておく

   レンチンのほかにも、中途半端に残った食材はしょうゆに漬けておくだけ、冷凍するだけで、ちょこちょこ使いが可能になり、全部食べ切れるようになるという。

   また、まとめて切るだけ、レンチンしておくだけで、料理はグンと時短になり、疲れている日でも一品が完成する。

   読み終わり、これまで、どんな野菜を一番ダメにしたか、胸に手を置いて考えてみた。もやしかピーマンかほうれんそうか。このあたりがベスト3、もといワースト3になりそうだ。結論はほうれんそうだ。軸と葉に分け、ザク切りにする。熱湯に軸→葉の順で入れてゆでる。絶対に絞らず、小分けにして冷凍する。1か月持つそうだ。なるほど。軸と葉に分けるのがポイントだな。

   いわゆる料理本とは違う、基本的な知恵がつまった本だと思った。索引を見ると、これでも227のレシピが載っている。基本から応用への動線が短く、どれもすぐに作れそうな料理ばかりだ。(渡辺淳悦)

「賢い冷蔵庫」
瀬尾幸子著
NHK出版
1430円(税込)