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大阪ガス株が連日の年初来安値、資源高の価格転嫁に「時間差」 東京ガスも安く

   大阪ガスの株価が2021年10月下旬に連日年初来安値を更新した。

   世界的にエネルギー価格が上昇するなか、国内でガス販売価格に転嫁するのに時間を要しており、10月27日発表の2021年9月中間連結決算は営業減益になった。足元で原油などの価格はなお上昇を続けており、業績を懸念する売りが集まった。

   11月2日の終値は前日比3円安の1852円だった。

  • 資源高の影響で大阪ガスや東京ガスの株価も値下がり……(写真はイメージ)
    資源高の影響で大阪ガスや東京ガスの株価も値下がり……(写真はイメージ)
  • 資源高の影響で大阪ガスや東京ガスの株価も値下がり……(写真はイメージ)

低い販売単価は国の原料費調整制度の影響

   中間決算の内容を確認しておこう。売上高は前年同期比1.8%増の6504億円、営業利益は21.9%減の405億円、経常利益は13.5%減の473億円、最終利益は横バイの367億円。売上高がやや増えたのは、米国のエネルギー事業が増収だったことが寄与したもので、国内で「ガス販売単価が低めに推移した」(大阪ガス)ことを補った。

   ガスの販売単価が低めに推移したことについて、大阪ガスは「(国の)原料費調整制度」の影響だと指摘している。

   この制度は原料価格が大幅に上昇した際の需要家への影響を緩和するためのもので、原料費が高騰しても料金への反映を抑制する方向に働く。大阪ガスは、この制度によって「原料価格の変動が販売単価に反映されるまでのタイムラグによる減益」があったと説明している。

   中間決算後の10月に入ってもエネルギー価格の天井は見えず、国際指標であるニューヨーク市場の原油先物価格は約7年ぶりに1バレル=80ドルを突破、10月末時点は83ドル台だ。一方、外国為替市場で円安・ドル高が進んでおり、11月1日時点で約3年ぶりの水準となる1ドル=114円台。円安で円ベースの調達価格が上昇するという面からも業績に悪影響を与えそうだとの懸念が広がっている。ただ、大阪ガスは2022年3月期の業績予想は据え置いている。

   大阪ガスの株価は中間決算発表翌日の10月28日に一時、前日終値比52円(2.8%)安の1820円、さらに翌29日に一時、前日終値比78円(4.2%)安の1779円と続けて年初来安値を更新した。

じわり値上がりの東京ガス、大阪ガスとの違いは?

   同業他社も同様の理由で株安が進んでおり、東京ガスや東海地方で営業する都市ガス3位の東邦ガスも10月下旬に年初来安値を更新した。東京ガスに至っては28日に2012年6月以来、約9年4か月ぶりの安値を記録した。

   ただ、東京ガスはその10月28日の取引時間中に2021年9月中間連結決算と同時に発表した業績予想の上方修正と増配が「想定外」(SMBC日興証券)と好感を呼び、この日つけた年初来安値から一時、一気に133.5円(7.2%)高の1988.0円まで上昇、29日以降もじわじわと値を上げている。米豪で手がけるプロジェクトで利益が増えることや調達の効率化、液化天然ガス(LNG)のトレーディング益の増加が上方修正の要因だ。

   大阪ガス同様、ガス販売価格への転嫁のタイムラグはあるものの、他事業で一定程度補えると見立てたようだ。とはいえ、東京ガスの株価はそれでも今年3月29日につけた年初来高値(2579.5円)にはるか遠い。 各社ともエネルギー高の負の影響を拭い去るにはもう少し時間がかかりそうだ。

(ジャーナリスト 済田経夫)