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インバウンド回復に向けた一手 コロナ時代を乗り切る「中国向け越境EC」

   新型コロナウイルスの感染拡大の影響で、訪日外国人によるインバウンド需要は大きな打撃を受けている。

   入国制限が続くなか、中国人観光客向けビジネスを展開するインタセクト・コミュニケーションズ(東京都千代田区)は、日本の産品を中国へと届ける「越境EC」に好機を見出した。J-CAST会社ウォッチは2021年10月、現状と今後の展望を譚玉峰社長に聞いた。

  • 越境ECに好機を見出したインタセクト・コミュニケーションズ(写真は、譚玉峰社長)
    越境ECに好機を見出したインタセクト・コミュニケーションズ(写真は、譚玉峰社長)
  • 越境ECに好機を見出したインタセクト・コミュニケーションズ(写真は、譚玉峰社長)

越境EC市場は拡大傾向にある

   インタセクトはもともと、WeChatPayなどが使える決済システム「IntaPay(インタペイ)」を展開していて、SNSでのインフルエンサーを起用したインバウンドプロモーションなどを通して、「旅マエ」の情報収集から、来日後のプッシュ広告などによる「旅ナカ」、帰国後にEC誘導や再訪を促す「旅アト」まで、訪日客をターゲットにした集客支援をワンストップで扱ってきた。

   そこに襲ってきたのが、コロナ禍だ。日本政府観光局(JNTO)が発表している訪日外客数によると、2020年の訪日中国人観光客は約86万5000人。前年(約857万5000人)に比べて、89.9%減となった。

   国を越えた往来が困難になった一方で、いわゆる「巣ごもり需要」は対中国でもあるようだ。経済産業省が21年7月に公表した「令和2(2020)年度 産業経済研究委託事業(電子商取引に関する市場調査)」の結果によると、中国消費者による日本事業者からの越境EC購入額は、20年に1兆9499億円。前年比17.8%増と、市場は拡大しつつある。

   そこでインタセクトが着目したのが、越境EC事業だ。6月には京都中央信用金庫(京都市)とともに、ECモール「京都優品跨境商城」をスタート。インバウンド市場で培ったノウハウは、越境EC事業にもつぎ込まれている。

売れ筋が「日本酒」なワケ

   「京都優品跨境商城」には10月1日時点で、料亭をはじめ、化粧品や雑貨メーカー、酒蔵など130社が参加し、取扱商品数は延べ600SKU(ストック・キーピング・ユニット=最小の在庫管理単位)。すでに2500点の商品が売れた。

越境ECにインバウンド支援のノウハウをつぎ込む(写真は、譚玉峰社長)
越境ECにインバウンド支援のノウハウをつぎ込む(写真は、譚玉峰社長)

   売れ筋の商品は、お菓子やお酒といった食品類だという。なかでも日本酒が好調な理由としては、中国国内の食生活が変わってきたこともあると、譚社長は分析する。中国では長らく、アルコール度数の高い白酒(パイチュウ)に、濃い味付けの料理をあわせるのが主流だった。しかし生活面の改善にともなって、あっさりした味わいが好まれるようになり、日本酒やワインの需要が増しているという。酒器にも追い風が吹く。

「昔は『余計なお金を払うなら要らない』となっていましたが、いまは『ちょっといいものを使おう』と、付加価値が求められる時代です。商品だけじゃなくて、後ろにあるストーリーも届けられると、愛着も出てきます」

   譚社長は、越境ECを軸に、ウィズコロナ時代の展開も見据えている。地方百貨店と組んだ、日本国内向けのECライブ配信を予定するほか、日本滞在時に病気などのトラブルに対応できる訪日客向けのプラットフォームなど、構想は多岐にわたる。決済から宣伝、商品開発まで、1社でまかなえる強みを生かして、インタセクトの夢は広がりつつある。