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DX化でさらに進化する「マニュアル」づくり コニカミノルタが「COCOMITE」で支援

   企業にとって、マニュアルは業務を円滑に進めるうえでなくてはならないもの。とはいえ、マニュアルづくりは見やすくわかりやすくはもちろん、何かのときに取り出しやすく、また最新情報への更新など、運用・管理面の視点も欠かせず、大変な作業だ。

   オンラインマニュアル作成・運用サービスの「COCOMITE(ココミテ)」。マニュアルは、従来のオフィスソフトで作成、管理するものという概念を覆して、簡単に作成でき、利用しやすく、管理しやすいマニュアルサービスとして2020年、コニカミノルタがリリースした。その後も適宜機能を付加しながら、進化を続けている。

   このサービスの開発に携わったコニカミノルタ情報機器開発本部DX開発推進センター4Gのマネジャー、 中村圭(なかむら・けい)さんとリードマーケッターの髙松萌香(たかまつ・もえか)さんに話を聞いた。

  • 「このマニュアル、古いんじゃない?」なんてこともなくなる……(写真はイメージ)
    「このマニュアル、古いんじゃない?」なんてこともなくなる……(写真はイメージ)
  • 「このマニュアル、古いんじゃない?」なんてこともなくなる……(写真はイメージ)

最新情報に更新されないマニュアル

コニカミノルタ情報機器開発本部DX開発推進センター4Gのマネジャー、 中村圭さん
コニカミノルタ情報機器開発本部DX開発推進センター4Gのマネジャー、 中村圭さん

   ――オンラインマニュアルサービス「COCOMITE」の開発のきっかけと狙いはどのようなものだったのでしょうか。

中村圭さん「『COCOMITE』は、2020年2月にサービスをリリースしましたが、その前身サービスに、多言語マニュアルの作成、共有を目的とした『AiLingual(アイリンガル)』がありました。でも、企業へのヒアリングを進めるうちに、多言語以前にマニュアルの作成がうまくできていないという課題をもつ企業がほとんど、ということがわかってきました。当時、マニュアルはワードなどのオフィスソフトで作成し、サーバー上や紙で管理するのが一般的。『文字ばかりで読みにくい』、『閲覧時に他のデータと混同して見つけにくい』、『最新情報に更新されていない』 などの理由から、作成したものの活用されていないケースが多く見られました。同時に、ペーパーレス化や動画活用の期待やニーズがあるということもわかりました。そこで一たん『AiLingual』を販売停止し、『COCOMITE』というプロダクトに昇華させて開発することになりました」

   ――「COCOMITE」の開発では、どのような点を工夫されたのでしょうか。

中村さん「『AiLingual』の失敗は、マニュアルソリューションではなく、翻訳ソリューションと間違えられてしまったこと、つまり間違ったプロダクト認知からスタートしてしまったことと、さまざまな機能がついており、自由度が高かったことが、かえって使いづらさにつながっていたということが背景にありました。『COCOMITE』は、マニュアルソリューションという軸はぶれずに、必要最小限の機能から始めて、スピーディーに商品開発する方法をとりました」

   ――必要最小限の機能でスタートしました。

髙松萌香さん「マニュアルソリューションには、マニュアルの作成、管理、共有という主に3つのフェーズに合わせた機能があると考えています。こうした機能以外は、最初は極力持たせないようにしました。たとえば、文字編集機能やハイパーリンク、動画のアップロード機能は、あったらより良い機能ではありますが、最初はこうした機能を削ぎ落し、後から順次付けていきました。リリース後は、1か月半~2か月に一度、大きな機能を1つか2つ追加し、サービスの拡充を図っています」

「シンプルな機能で使い勝手が良い」と好評

コニカミノルタ情報機器開発本部DX開発推進センター4Gのリードマーケッター、髙松萌香さん
コニカミノルタ情報機器開発本部DX開発推進センター4Gのリードマーケッター、髙松萌香さん

   ――「COCOMITE」に対するお客様の反応はどのようなものでしたか。

髙松さん「はじめに導入されたお客様からは、機能がシンプルな分、使い勝手が良いという評価をいただきました。マニュアルは往々にして読みにくいという意見がありますが、『COCOMITE』では、規則性を持たせているため、『読みやすくなった』ともいわれます。小規模な企業からでも始められる料金体系で、『段階的に広げていきやすい』という点も特徴です。たとえば大手企業が全社にマニュアルを使いたい場合も、いきなり全社に導入するのではなく、ある特定した部門でトライアル的に運用して、成功体験を積んだうえで段階的に全社への導入ができるという展開しやすさがあります」

   ――どういった業界からの引き合いが多いのでしょうか。

髙松さん「マニュアルは、業界や会社の規模を問わず、どの会社にも存在するものなので、特定の業界に向けたソリューションではありませんが、最近は、医療福祉分野、製造業、サービス業、卸・小売りなどの業界からのお問い合わせが多くなってきている印象があります。すでにマニュアルがあるけれど使いづらいとか、引き継ぎや異動した際に、業務が滞ってしまうという課題があり、異動の多い4月、10月に問い合わせが増えるケースが多いですね」
中村さん「現時点で『COCOMITE』のトライアルを利用されているのは450社。トライアルを経て、正式契約をしていただける会社も増えてきています。ウェブサイトの情報や比較サイトから『COCOMITE』を知り、お問い合わせいただくケースが多く、いかに各社がマニュアルに課題を持たれているかということがわかります。すでに『COCOMITE』を利用している会社のグループ会社からの問い合わせも徐々に増えてきていますね」

   ――2021年10月からクリニック・医療機関に最大3か月の無料提供を始められているとのことですね。

髙松さん「はい。クリニックや医療機関へのヒアリングの中で、コロナ禍で業務内容がガラッと変わり、それによってスタッフへの教育・周知に時間を割いている機関が増えていることがわかりました。さらに医療機関にとっては多忙な時期ということもあり、3か月という期間で、判断していただければと思い、トライアル期間を1か月から3か月に延長しました。院内のマニュアルに利用していただくほか、患者さんへの各種案内にも利用したいという機関もあり、活用範囲が広がっていると感じています。また、現在のマニュアルを無料で50ページまで移行するサービスも好評です」

「マニュアルならCOCOMITE」と言われたい!

   ――新たにセキュリティの機能強化を図ったそうですが、どのような背景があったのでしょうか。

中村さん「セキュリティ要件の高いお客様からのご要望もあり、登録したIPアドレスからのみマニュアルへアクセスできる、『IPアドレス制限機能』を付加しました。同時に、外出先でもアクセスできるように、一時的に特定のIPアドレス以外からアクセスできるユーザーを登録することも可能にしています。こうした機能の追加によって、これまでは、主に中小企業からの利用をいただいていましたが、徐々に大企業からの利用や情報通信業界のお客様の利用も増えてきている状況です」

   ――今後の『COCOMITE』の完成形のイメージがあれば教えてください。

中村さん「『マニュアルならCOCOMITE』、と言われるような商品にしていきたいと思っています。現在は、マニュアルの活用状態を見える化をして、お客様が、アクセスログ、操作ログの状況を確認できるような機能の開発に取り組んでいます。また、ユーザーインターフェースでの多言語化の機能はすでに付加されていますが、将来的には、コンテンツ自体の多言語化の開発を進めていきたいと思っています」
髙松さん「業務マニュアルのソリューションから始めた開発ですが、その周辺にある新たな課題も見えてきています。たとえば、プロセスや手順の簡略化という課題をもつお客様もいらっしゃいます。今後は、そういった課題に対応できるようなソリューションも考えていきたいですね」

(聞き手 戸川 明美)

プロフィール
中村圭(なかむら・けい)
コニカミノルタ情報機器開発本部DX開発推進センター4G
マネジャー
大手メーカーでメカニカルエンジニアとして2003年キャリアスタートし、2008年新規事業企画に転進。主にICT分野の事業企画開発で顧客に入り込み複数の事業創発を多岐ポジションでリード。2015年当社ビジネスイノベーションセンタージャパンに新規事業開発リードとして参画。2019年にCOCOMITEを企画し、以降事業統括を担う。

髙松萌香(たかまつ・もえか)
コニカミノルタ情報機器開発本部DX開発推進センター4G
リードマーケッター
コニカミノルタに新卒で入社。その後、国内販売会社にてデジタルマーケティングと連動したインサイドセールスに従事。2020 年より現所属にて「COCOMITE」 のインサイドセールス・オンラインセールス推進統括、デジタルマーケティングを担当。