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今年の締め括り 2022年を大予測! 週刊東洋経済、週刊ダイヤモンド、週刊エコノミストが特集

   「週刊東洋経済」「週刊ダイヤモンド」「週刊エコノミスト」、毎週月曜日発売のビジネス誌3誌の特集には、ビジネスパースンがフォローしたい記事が詰まっている。そのエッセンスをまとめた「ビジネス誌読み比べ」をお届けする。

   コロナ禍の「自粛経済」と東京オリンピック・パラリンピックの開催に揺れた2021年。その締め括り、年内の最終号は3誌がそれぞれ2022年の大予測を特集している。ともに合併号となる。

  • 週刊東洋経済は「108のテーマ」で2022年を先読み!!
    週刊東洋経済は「108のテーマ」で2022年を先読み!!
  • 週刊東洋経済は「108のテーマ」で2022年を先読み!!

来年は選挙の年と「週刊東洋経済」

「週刊東洋経済」2021年12月25日・2022年1月1日合併号
「週刊東洋経済」2021年12月25日・2022年1月1日合併号

   「週刊東洋経済」(2021年12月25日・2022年1月1日合併号)の特集は、「2022年大予測」。108のテーマで「未来の激変をすべて先読み」と題している。

   冒頭、2022年の主要スケジュールをまとめている。「中国、選挙、金融」から目が離せないという。中国は2月から北京冬季オリンピック・パラリンピックがある。秋に予定される中国共産党大会で、習近平総書記(国家主席)が3期目に入るかが注目されている。米中対立が激しくなり、台湾をめぐる緊張も続きそうだ。

   選挙は1月のイタリア大統領選挙、3月の韓国大統領選挙、4月のフランス大統領選挙、7月の日本の参議院議員選挙、11月には米国で中間選挙がある。とくに韓国と米国の選挙結果は日本の外交にも大きな影響を与えると、ジャーナリストの池上彰氏も指摘している。

   金融では、2月に2期目に入るパウエル議長率いる米FRB(連邦準備制度理事会)が、金融緩和政策の終焉をいつ迎えるかがポイントだ。日本では超金融緩和がまだ続いており、日米の金利差拡大が懸念される。

   ほかの国内関連のスケジュールとしては、4月に東京証券取引所の新3市場区分スタート、青森銀行とみちのく銀行が経営統合、「LINE Pay」の国内決済サービスを「PayPay」へ統合、8月の東京ミッドタウン八重洲竣工予定、10月にエア・ドゥとソラシドエアが経営統合、愛知銀行と中京銀行が経営統合、フィディアホールディングスと東北銀行が経営統合など。

   新春号らしく、スペシャルインタビューも盛りだくさんだ。なかでも欧州の知の巨人、ジャック・アタリ氏が、コロナ後の新資本主義は「命の経済」に転換せよと提唱しているのに注目した。医療や教育、インフラ、再生可能エネルギー、エコ住宅、安全などの推進を呼びかけている。政府は公的資金を投じることによって、発電の脱炭素化や電気自動車の推進などを支援すべきだ、としている。

   「まさか!の10大リスクで読み解く22年」「日本のトップ企業33社経営者アンケート」「お年玉ランキング350&お化け期待銘柄16」など企画が目白押し。四季報記者が予想する60の「業界天気図」は、他業界の行方を知るうえで参考になる。

   2021年を代表する経済書・経営書ベスト10を、識者が選んでいる。1位に輝いたのは「バブルの経済理論」(櫻川昌哉著、日本経済新聞出版)。バブル経済の本質を歴史と理論から解明した本だ。2位は「ジョブ型雇用社会とは何か」(濱口桂一郎著、岩波新書)。「ジョブ型」の言葉を誤用する経済界に警鐘を鳴らしている。3位の「自由と成長の経済学」(柿埜真吾著、PHP新書)は、今年話題になった「人新世の『資本論』」(斎藤幸平著、集英社新書)を真っ向から否定する。年末年始に読んでみたら、どうだろう。

「脱炭素の揺り戻し」などが潮流に

「週刊ダイヤモンド」2021年12月25日・2022年1月1日合併号
「週刊ダイヤモンド」2021年12月25日・2022年1月1日合併号

   「週刊ダイヤモンド」(2021年12月25日・2022年1月1日合併号)は、「2022総予測」。編集部記者による、日本企業を動かす「8つの潮流」が参考になる。

   「脱炭素の揺り戻し」「落ちた邦銀の復権」「半導体欠乏の教訓」「コロナ変異株ショック」「『分厚い中間層』のうそ」「資源高と中国脅威」「デジタル敗戦のリベンジ」「メタバース覇権」の8つだ。

   「脱炭素の揺り戻し」では、投資家や金融機関から資金を引き出すためのアピール合戦は「言ったもん勝ち」になっているが、通用しないと見ている。現実との折り合いをつけながら脱炭素は進みそうだ。

   「コロナ変異株ショック」では、2022年に日本の製薬業界からコロナ治療薬・ワクチンが実用化される見通しを示している。塩野義製薬が経口治療薬を、塩野義、第一三共、田辺三菱製薬などがワクチンを出す見通しだ。海外メーカーに比べて約1年の遅れがあり、「世界に市場はどの程度残されているのか」という不安視する業界関係者の声を紹介している。

   株価・景気・投資、国際、産業・金融、政治・社会・文化とジャンルごとにオーソドックスな予想をまとめている。その中で異彩を放っているのが、「不動産業界インサイダー地下座談会」という記事だ。「五輪後暴落って言ってた人、全員正座して」「20年間でこんなに上がった年は見たことないよ」と、2021年の「爆上げ」不動産相場を語っている。その一方で、「意味不明の価格高騰がヤバイ」とも。

   「20業種の天気予報」から気になった見出しをピックアップしよう。航空では「ANAがリストラ断行」、鉄道では「聖域なき『値上げラッシュ』」、自動車では「トヨタとVW優勢、ホンダと日産劣勢 『脱EV』ロケット回復で明暗!」、電機では「東芝と三菱電機の劣勢鮮明に」、銀行では「異例リストラが再編の兆し」などだ。

   社会関係では、いくつか興味深いインタビューも。皇室に詳しい小田部雄次・静岡福祉大学名誉教授は、「22年中にも愛子さまの『皇位継承権』問題の議論を始めるべき」と話している。

   また、コロナ対策では、日本赤十字社医療センターの出雲雄大・呼吸器内科部長が画期的飲み薬として、米ファイザーの「パクスロビド」を挙げている。ただ、画期的な経口薬が登場しても、併せて感染症法上での分類を「季節性インフルエンザ相当」に変更することもセットで行われなければ意味がないという。現状の扱いでは、院外の薬局でコロナの経口薬を入手することができないからだ。「現状のような厳格な感染対策を社会に強い続けることが最善なのか、見直すべき時が来ているのではないでしょうか」と問題提起している。

   同誌も2021年のベスト経済書を挙げている。1位は「監視資本主義」(ショショナ・ズボフ著、東洋経済新報社)、2位は「資本主義だけ残った」(ブランコ・ミラノヴィッチ著、みすず書房)、3位は「デジタル化する新興国」(伊藤亜聖著、中央公論新社)。上位を資本主義のあり方を分析する本が占めた。

米国経済は好調、株価も最高値更新か!?

「週刊エコノミスト」2021年12月28日・2022年1月4日合併号
「週刊エコノミスト」2021年12月28日・2022年1月4日合併号

   「週刊エコノミスト」(2021年12月28日・2022年1月4日合併号)の特集は、「世界経済総予測2022」。第1部で「マクロ&国際政治」、第2部で「マーケット展望」をまとめている。

   編集部による巻頭記事は、「米国『需要爆発』と供給回復へ あふれるマネーが株高演出」という景気のいいタイトルだ。米アドビの調査によると、11月1日~29日の全米のオンラインショッピングの売り上げは、前年同期比11.9%増の1098億ドル(約12.兆円)に達した。

   同誌が行った主要金融機関・シンクタンクへのアンケートでも、22年の米国は実質GDP成長率で3.2~4.7%と比較的高い予想になっているという。22年の世界経済は、大きな飛躍を遂げそうだと、結んでいる。

   マーケット展望も、22年前半、米国株は高値更新という平川昇二氏(東海東京調査センター・チーフグローバルストラテジスト)の予想を伝えている。米国のインフレのピークアウト、在庫循環の好転、雇用の好転などを理由に挙げている。

   企業業績も拡大し、S&P500株価指数ベースの予想EPS(1株当たり利益、12カ月先予想)は現在の220ドルから22年3月末に235ドル、6月末には245ドルまで上昇すると予想している。

   長短金利差はまだ残っているが、景気を崩すような水準には至っておらず、米国の景気拡大や株高は続くと見ている。

   昨年の今頃を思い出してみよう。新型コロナが年を明けてから再びピークを迎えるとは、真剣に考えていなかった。東京オリンピック・パラリンピック時の感染拡大、急速なワクチン接種によるその後の新規感染者の減少、どれも予想していなかった事態である。幸い、今は低い水準で推移している。コロナ禍で3年目を迎える。来年こそ、コロナ禍後の健全な経済と社会への回復を望みたい。(渡辺淳悦)