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欧州に高まるインフレ 2022年は運命の分かれ道! ギリシャ、イタリア...... 懸念される経済基盤の脆弱さ (志摩力男の展望)

   欧州でインフレが高まっています。米国が6%台ですが、欧州も4%台になってきました。かつての欧州中央銀行(ECB)であれば、機敏に対応するところですが、ECBのラガルド総裁であれば、積極的な引き締めには反対でしょう。引き締め政策を行うと、ギリシャやイタリアなどの域内の弱い国の経済がガタつく可能性があります。

   また、中国経済が今後、若干減速していくことを考えると、中国と貿易関係の深い欧州は米国ほどの成長にはならないでしょう。

   よって、米国株が大きく変動しなければ、米欧の金利差を反映し、ゆっくりとドル高ユーロ安に向かうと想定します。基本的に対ドルで1.05~1.15ドルのレンジですが、1.15ドルをしっかり超えてくると、それは何かファンダメンタルズが大きく変化したということになり、再考が必要になってきます。ユーロ円は基本125~140円レンジ想定で、リスクは上方向と考えます。

  • 2022年の英ポンドはどう動く......(写真は、英国ロンドン)
    2022年の英ポンドはどう動く......(写真は、英国ロンドン)
  • 2022年の英ポンドはどう動く......(写真は、英国ロンドン)

気になる英ポンドの動向

   「ブレグジット」(英国のEU離脱)というテーマがなくなり、2021年のポンドは比較的安定して推移しました。特にベンチマークとなる対ユーロレートは、このところ1ユーロ=0.84~0.87ポンドのレンジでほとんど動きません。

   新型コロナウイルスの感染者数が減少しないことは気がかりですが、先日、イングランド銀行(英中央銀行)が利上げに踏み切ったように、オミクロン株を過大に考えすぎなくても良いのでしょう。

   基本的には、ポンド独自の相場にはなり難いと考えていますが、変異株の「オミクロン株」への過大評価を排除すれば、今後1%方向に向けて利上げが想定されるポンドはユーロに対して強くなるのでしょう。

   対円では、148円が非常に重要なサポート。ここが割れると話が変わってきます。割れなければ、160~165円を目指すのでしょうか。

◆ 豪ドルとNZドルのゆくえ

   2022年は中国経済の減速が想定されています。昨年来、不動産大手の恒大集団の債務問題がクローズアップされていますが、不動産市況は今後ゆっくりと何年にもかけて下落することが予想されます(ただし、日本のように不動産市況の暴落は想定されていません)。成長率も、ここ数年6%台後半から半ばぐらいの安定した成長が続きましたが、これが5%前後に落ちてきます。もしかすると4%台後半になるかもしれません。

   しかし、中国経済はすでに日本の3倍の規模があります。それだけ大きな経済が5%で成長することがスゴイことです。中国の成長減速がオーストラリア(豪州)経済にもネガティブな影響を与えると想定されていますが、過剰な下方向の見積もりも危険でしょう。

   豪州経済に重要なのは、鉄鉱石の価格です。輸出の3分の1は鉄鉱石で、ほとんどが中国向けです。中国の建設需要は軟化するでしょうが、絶対額は基本的に大きいのです。2022年、豪ドルは対米ドルで0.6800~0.8000ドル前後でしょうか。対円では78円が重要なサポート。抜けないことを前提に1豪ドル=78.00~90.00円レンジと想定します。

   ニュージーランド(NZ)経済は、今年2%に向けて利上げすると想定されています。2月の理事会で0.25%ないし0.50%の利上げが想定されますが、0.5%利上げであれば上昇に弾みがつきます。対円では75円が重要なサポート。基本的に1NZドル=75~85円レンジでしょうか。

「お騒がせ」トルコリラはどうなる?

トルコリラはどうなる?
トルコリラはどうなる?

   トルコが、引き続き注目です。新たな預金制度を導入しましたが、長期運用は不可能。2023年の選挙(本来は2023年ですが、前倒しされる可能性が高いと思われます)の結果次第で大きく変わるでしょう。もし、エルドアン大統領が大統領職を失った場合、トルコ中央銀行が引き締め姿勢に転換し、トルコリラの上昇が期待されます。その一方、エルドアン大統領が続投となれば、トルコリラ円は1リラ=6円を割れるでしょう。

   新興国通貨では、メキシコで中央銀行の新しい総裁の力量が試されますが、メキシコ中銀は伝統的にしっかりと対米金利差を広めにとるので、ほぼ安定するでしょう。ただ、新総裁が緩和姿勢を示したりすると、ペソは崩れます。

◆ 米中対立、どこかで激突? くすぶる地政学リスク

   米中対立の激化に伴い、どこかで中国関連で大きな動きがあるとの観測が消えません。2月の北京冬季オリンピック・パラリンピックのあとに、ウクライナ周辺に進出しているロシア軍がウクライナ侵攻に動くのではないかともウワサされています。

   ロシア軍のウクライナ侵攻は想定していませんが、多くの人はバイデン米大統領のロシア・プーチン大統領への対応が非常に手薄だと感じているでしょう。

   中国が台湾への圧力を強めるという観測も消えません。中国が拙速な行動を取るとは思えませんが、米中関係、中台関係も、時間が経過すればするほど、中国に有利に働きます(中国経済の成長が、米国を上回るということ)。よって、巷間の観測に対して私はドラスティックなことはなにも起こらないと思っていますし、そうしたリスクをとることが中国の国益にものすごく寄与するとも思えません。

   ただ、何が起こってもおかしくない状況ではあるので、引き続き注意深く注視していくべきでしょう。もし、中台関係が激化すれば、マーケットに及ぼす影響は甚大です。ドル安円高リスクが高まるでしょう。(志摩力男)