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会議で女性に「わきまえる」ことを求めてしまうお歴々の男性に、ぜひオススメしたい! それは......【vol.8】(川上敬太郎)

   兼業主夫となって初めて買い物した日。スーパーマーケットに入店して、すぐ違和感に襲われました。

   そのスーパーに行くのは初めてではありませんが、これまでの買い物はいつも休日。平日昼間に出向いてみると、そこは女性ばかり「主婦」一色の世界が広がっていました。

  • 男性ひとりで、平日昼間のスーパーマーケットに行ってみると......
    男性ひとりで、平日昼間のスーパーマーケットに行ってみると......
  • 男性ひとりで、平日昼間のスーパーマーケットに行ってみると......

男性講師ばかりの経営セミナーに違和感......

   長年会社勤めしてきたので、平日昼間を過ごすのは常にオフィス街。自社が入居するビルから一歩外に出ると、仕事スタイルの男女が颯爽と行き交う光景が目に入りました。

   その光景に慣れきっていただけに、女性ばかりの空間に足を踏み入れた時のポツンとした心細さたるや。「ど、どうも、失礼しますっ......」と、うつむきながら小さく独り言ちてしまいました。

   そんな買い物デビューから数日を経たある日。野菜が安いと聞いた別のスーパーに出向いた際には、店が近づくにつれて心臓がバクバクと音を立てました。

「なんだ、あの男? 主婦の領域荒らしやがって。とっとと帰れ!」

   店に入った瞬間、そんなふうにどやされる風景が頭をよぎり、終始ビクビクしながら買い物を終え、岐路についた時のすがすがしさときたら。まるで、初めての商談先で無事にプレゼンを終えた後に似た爽快感を覚えました。

   しかし、毎日スーパーに通っていると、だんだん慣れてくるものです。そして通う中でわかったこと。主婦のみなさんは、帰れ! などと言ったりしません。「うちらのナワバリに男が入ってきやがって」などと思う理由もないし、みなさん頭の中では「きょうの夕飯、何にしようか」とか、「そういえば醤油切らしてたから買っとかないと」とか、考えながら買い物をしています。

   そんなこんなで主夫生活にも慣れてきたころ、愛読している新聞を開いてギョッとしました。

「男の人しかいない・・・。」

   経営者セミナーの案内がバンっと全面に出ていましたが、そこにズラズラっと並ぶ講師陣たちの顔写真は貫禄ある男性ばかり。他のページを見ても、女性の姿もチラホラと見かけはするものの、ほとんど男性ではありませんか。平日昼間のスーパーとは、完全に真逆の光景です。

   しかし、考えてみると、新聞紙面が男性の顔写真ばかりというのは以前から見慣れていた光景です。つまり、変わったのは紙面側ではなく、私の受け取り方だということになります。スーパーでの心細い体験が、私に新しい視点を与えてくれたようです。

主婦のみなさんは主夫に「わきまえろ」とは言わない!

「そういや、閣僚会議で政治家が居並ぶ姿や、経営者が集うパーティーも男性ばかりだな」

   そんなことを思っていた時、東京オリンピック・パラリンピック大会組織委員会の当時の男性会長が、女性が多い会議は時間がかかると述べたニュースがふと頭をよぎりました。「私どもの委員会の女性は、わきまえておられる」という発言も物議を醸しました。

「こわもて男性だらけの会議に出席するだけでも緊張するだろうに、『わきまえておられる』なんて言われたら、女性はさぞかし発言しづらいはず......」

   それに対し、行きつけのスーパーで買い物をしている主婦のみなさんは、私を煙たがる様子などありません。店員さんたちは、私に何かを「わきまえる」よう求めることもなく、「いらっしゃいませっ」と毎日笑顔で迎え入れてくれます。

   それどころか、ある日レジで会計を終えると、店員さんから声をかけられました。

「『いつも』ありがとうございます」

   えっ、「いつも」来てるの知ってました? まあ、確かに目立ちますよね、私。こっぱずかしいけど、うれしいです。女性だらけの空間に、当初あれだけ感じていた心細さなどどこへやら。一気に吹き飛んでいってしまいました。

   もちろん、店員さんは私が男性だから声をかけたわけではなく、何度も来店しているお客にはそう言ってるのでしょう。つまり、他のお客さんと同じように、私に対しても声をかけてくれたわけです。自分の存在を受け入れてもらっている感じがしました。

   それに対し、会議で「わきまえる」ことを女性に求めてしまうお歴々の男性たるや......。しばらくのあいだ、平日昼間のスーパーで買い物してみてはいかがでしょう? 自分だけが異質な存在である空間が、如何に心細いものか肌でわかると思いますよ。

   女性たちは会議室の中で、その何倍ものプレッシャーを感じてきたはずです。そして、改めて考えてみてください。果たして、本当に「わきまえる」べきは誰なのかを。(川上敬太郎)