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ウクライナ危機と米国利上げの影響は?...東洋経済「株崩落」 ダイヤモンド「M&A」、エコノミスト「グリーン素材&技術」を特集

   「週刊東洋経済」「週刊ダイヤモンド」「週刊エコノミスト」、毎週月曜日発売のビジネス誌3誌の特集には、ビジネスパースンがフォローしたい記事が詰まっている。そのエッセンスをまとめた「ビジネス誌読み比べ」をお届けする。

  • 日米の株式市場の行方とは(「週刊東洋経済」の特集から)
    日米の株式市場の行方とは(「週刊東洋経済」の特集から)
  • 日米の株式市場の行方とは(「週刊東洋経済」の特集から)

株急落の相場での投資法

「週刊東洋経済」(2022年3月19日号)
「週刊東洋経済」(2022年3月19日号)

   3月14日発売の「週刊東洋経済」(2022年3月19日号)は、「株崩落 次の一手」と題して、ウクライナ危機と米国利上げで激震の波乱相場でのサバイバルを特集している。

   日米の株式市場の行方について、6人のアナリスト、ストラテジストが語っている。日経平均株価については、6人中5人が「3月底値の年後半高」という回答。米NYダウ平均株価については見方が分かれ、22年末時点では3万6000ドル~4万ドルと幅がある。

   世界経済が混乱する中でも、伸びる業種も当然ありそうだ。3月18日発売の「会社四季報」春号の集計では、全上場企業を合計した来期の予想は営業利益が今期比11.0%増、純利益が同4.5%と拡大する見込みだ。

   業種別では、人の動きが増えると期待される「空運業」が黒字に転換、「陸運業」も鉄道の回復と通販貨物増で復調の見通し。「電気・ガス業」は燃料高の料金転嫁が進み、増益へ転換する。

   一方、前期比で純利益が減りそうなのは石油・石炭製品など13業種ある。荒れる相場でも、業績が好調な企業の株価は底堅い。同誌では、全体相場が崩れる中での次の一手となりうる投資法を探っている。

   ウクライナ・ロシア危機で売られる株、変われる株をまとめている。売られる株に挙げられているのは、ウクライナの工場の操業を停止したJT、ロシアの木材企業を買収したばかりの飯田グループホールディングス、ロシアの天然ガス開発プロジェクト「サハリン2」に出資した三井物産など。

   一方、世界的な不安定化を受け、買われているのが、防衛関連やサイバーセキュリティー関連だ。貿易関連機器を手掛ける東京計器は3月4日に昨年来高値をつけた。

   米S&P500株価指数は1945年以降、軍事衝突が18回あったが、うち14回は3か月以内に上昇に転じているというUBSウェルス・マネジメントの調査に基づき、「こういうときは長期的な視点に立って、成長株を買うタイミングだ」という見方を紹介している。

   そして、「会社四季報」の山本隆行・元編集長が急落局面に耐える投資術について書いている。

1 落ちるナイフはつかむな! 株価急落中は買わない
2 先行き不透明なときは様子見 テロなど終わりが見えない状況のときは売買を控える
3 頭と尻尾はくれてやれ! 株価の天井や大底での売買は至難の業。二番底を確認してから優良株を仕込む

   以上の格言が参考になるだろう。

   「会社四季報」春号から、いくつかのランキングを先取りして掲載している。来期最高益更新額ランキングで1位になったのはトヨタ系自動車部品メーカー大手のアイシン、2位もトヨタ系の豊田自動織機、3位はエアコン大手のダイキン工業だ。

   来期純利益上方修正額ランキングは、1位トヨタ自動車、日本郵船(同額)、3位商船三井、4位川崎汽船と海運3社が上位に入った。

   過去の波乱相場はいずれも絶好の買い場であったとして、株価チャートで判断する方法やバリュー株(割安株)の仕込み法など、独自の投資術も取り上げている。「株価が下がった」と悲鳴を上げる人がいる一方で、虎視眈々とチャンスをうかがう人もいるようだ。

M&A仲介会社の実態

「週刊ダイヤモンド」(2022年3月19日号)
「週刊ダイヤモンド」(2022年3月19日号)

   「週刊ダイヤモンド」(2022年3月19日号)の特集は「事業継承バブル M&Aのカネと罠」。M&A仲介会社の実態を詳しく伝えている。

   先週の「週刊東洋経済」が紹介した「M&Aマフィア」が対象にするのは、上場企業同士の企業買収だった。それに対して本号の特集は、後継者不足から黒字にもかかわらず廃業の危機にある中小企業の事業継承にスポットを当てている。

   中小企業庁は60万社が廃業の危機にあり、2020年には5万社が休廃業・解散した。そこで動き出したのがM&A仲介業者だ。

   日本M&Aセンターホールディングス(HD)、M&Aキャピタルパートナーズ、ストライクの3社が「御三家」で、そろって最高益更新中だとか。業界パイオニアとされる日本M&Aセンターはビジネスモデルをゼロから作り上げた「絶対王者」。しかし、昨年12月、売上高の不正計上が発覚し、有価証券報告書を訂正する事態となり、社長以下が処分を受けた。

   M&Aキャピタルパートナーズは、上場企業で年収トップとして有名になった。平均年齢31.4歳。平均年収は2269.9万円。固定給は低いがインセンティブ報酬と業績連動賞与に上限はなく、大型M&Aを成約させれば年収1億円も夢ではないという。

   営業難易度が高いこともあって、転職者が圧倒的に多い業界だ。なかでも金融機関からの転職者が多いが、ハードルも高いようだ。採用の年齢上限はおおむね30代半ば。また、「営業成績が上位10%に入る」など前職での実績が求められる。それだけではない。中小企業の社長とも馬が合いやすい稀有な能力も必要だという。

   日本M&Aセンターは、全国の地方銀行などから事業継承に関するニーズを吸い上げるネットワークを構築してきた。地銀はM&Aの面倒な調整を引き受ける日本M&Aセンターに丸投げしてきたのだ。

   こうした構図にも変化が出てきたという。滋賀銀行は日本M&Aセンターと協業の道を歩み、受託件数を大きく増やした。また、京都銀行は14人の専従者を置き、成約件数を増やしている。

   オリックスや野村ホールディングスも、中小企業の事業継承ビジネスに参戦してきた。もともと金融大手と仲介専業会社は元請けと下請けの関係だった。もともとは、もうけが小さいため、顧客の中小企業から相談があれば仲介専業会社に丸投げし、報酬の30~50%を受け取るスタンスが基本だった。だが、仲介専業会社の肥大化に危機感を持ったようだ。

   M&A仲介は、売り手と買い手の双方から報酬を得る「両手取引」が基本。だが、一方の利益の最大化を図れば、もう一方の利益が毀損する利益相反が指摘されている。これは2020年、当時、行政改革担当相だった河野太郎氏が発言し、注目された話題だ。

   そこで、中小企業庁はガイドラインを策定し、業界は自主規制団体を立ち上げた。利益相反が社会問題化すれば、バブルは一気に弾ける、そんな危うさと隣り合わせだと結んでいる。

ウクライナ危機でなぜ「脱炭素」が加速するのか?

「週刊エコノミスト」(2022年3月22日号)
「週刊エコノミスト」(2022年3月22日号)

   「週刊エコノミスト」(2022年3月22日号)は、ウクライナ危機で注目されている「グリーン素材&技術」を特集している。ウクライナ危機がなぜ「脱炭素」を加速させるのか――。

   国際エネルギー機関(IEA)は3月3日、天然ガス危機に直面した欧州に10の提言をした。それによると、調達先をロシア以外に切り替える。家庭での設定温度を1度下げる。これらに加えて、太陽光と風力発電事業の促進や、バイオ由来燃料や原子力発電の活用などを挙げていた。

   こうした脱炭素関連提言の多くには、IEAが昨年発表した報告書に盛り込まれた要素がかかわっている。なかでも、水素発電とCO2の回収・処分は、インパクトの大きい技術革新だ。今後、水素、アンモニア、CO2処分が一体となる巨大経済圏の形成が予想される。

   化学品の原料をCO2から精製する研究が三菱ケミカルホールディングスなどで行われ、大規模実証設備をつくる段階だという。

   また、CO2の回収、利用、貯留する必要があるのは、生産工程での温室効果ガス排出を「実質ゼロ」に近づける「ブルー水素」「ブルー・アンモニア」の製造に欠かせないからだ。

   具体的に、すでに開発した油田・ガス田にCO2を入れ、その圧力で残った原油・天然ガスを回収する技術も開発されている。INPEX、三井物産の海外での取り組みを紹介している。

   特集では、洋上風力発電、EVなどで需要爆発の「銅」、持続可能な航空燃料として注目される「SAF(持続可能な航空燃料)」などと、企業の取り組みをまとめている。

   さらに、第2部「エネルギー革命の最前線」では、欧州の既存天然ガス網を水素網に根本的に変えることを紹介している。アフリカとの接続を目指しているが、太陽光、風力、水力などが豊富なアフリカで、グリーン水素製造能力を拡大する構想だ。

   レポートを寄稿した丸田昭輝氏(テクノバ エネルギー研究部統括主査)によると、水素には6つの「カラー」があるという。

   化石燃料由来で製造時にCO2を発生する「グレー水素」、再生エネルギー由来電力を用いた「グリーン水素」、化石燃料から製造するが、生産工程全体でのCO2排出量をゼロに近づけた「ブルー水素」、原発由来電力を用いた「ピンク水素」などだ。

   ウクライナ危機に乗じて、原子力発電所の再稼働をめざす動きが自民党などにあるが、企業の最前線、そして世界は、はるか前を見据えて動いていることがわかった。

(渡辺淳悦)