「戦略を考えてトライしてみたら、うまくいった」 地道に練習を重ねた新チャンピオンに聞く【数独人に会うvol.5】

遠藤憲さん
遠藤憲さん

   世界中から集まった数独の強者たちが年に1度、その腕を競い合う「世界数独選手権(World Sudoku Championship)」。2019年大会はドイツで行われ、以前、数独ポータルでもお伝えしましたが、結果は個人・団体ともに日本が1位を獲得しました。

   19年大会の個人戦でチャンピオンの座を獲得したのは、東京都在住の会社員・遠藤憲さんです。遠藤さんは、WSC 7回目のチャレンジでの初優勝。また、同時期に開かれる「世界パズル選手権(World Puzzle Championship)」では、個人戦2位入賞というパズルの達人でもあります。過去にもWPCでは15年、17年と2度優勝していて、「数独よりもパズルが本職」と思われてきました。

   今回、J-CAST数独ポータル編集部は遠藤さんに、数独との出会いや優勝までの道のり、魅力までざっくばらんにお話を伺いました。

1年かけてじっくり練習したのは「基礎」

   J-CAST 優勝、おめでとうございます。ご感想をお聞かせください。

   遠藤 ありがとうございます。今回はあまりミスが少なく、やるべきことをやれたと思いました。これまで個人戦では上位入賞にも届かなかったのですが、2018年大会で、なんとなく「やればできそうだぞ......」という手ごたえがあった。それで戦略を考えてトライしてみたら、上手くいきすぎたって感じです(笑)。 個人戦はプレーオフがなかったので全ラウンドの合計点で順位が決定したのですが、「時の運」も大きい。というのも上位選手は誰が優勝してもおかしくないレベルで、ほんのちょっとのタイム差やミスが結果を左右するからです。

2019年大会の様子(提供:日本パズル連盟)
2019年大会の様子(提供:日本パズル連盟)

   J-CAST 出題された問題の難易度はどのくらいですか?

   遠藤 通常の数独のルールとは違う問題もありますが、一般的にみてハードレベルの問題が普通に出てきます。1日半くらいかけて100問近く解くので、正確性とスピード感が大切です。

   J-CAST かなり集中力がいりそうですね......。大会に向けてどんな特訓をしたのか教えてください。

   遠藤 1年間、「簡単な問題をミスしないでスムーズに解くこと」を考えながら練習しました。「ブロッケン」や「マスミー」と言われるような、いわば基礎的なテクニックを使って早く正確に解くことを心掛けました。どんなに難しい問題でも、解く過程でスーッと進む部分がある。そこで単純なミスをしたり、見逃していたりしてはどうしようもないですからね。選手仲間にもアドバイスをもらったりして、基礎力を養うことにしました。

   J-CAST どんな風に練習していますか?

   遠藤 練習するときは、もっぱら紙とペンです。世界大会も紙とペンなので、慣れておくためにもそのほうがいいと思っています。愛用しているのは、シャープペンシルのHBです。

   J-CAST 紙とペンさえあれば、どこでも練習できますものね。やっぱり毎日、何問も解いているんですか?

   遠藤 ふだんは仕事をしていますから、ずっとというわけにはいきませんが、仕事が終われば、数独に限らずパズル全般でほぼ毎日何かしらの問題は解いています。でも、大会に向けた練習となると、休日にまとまった時間をつくって自宅で集中して取り組むタイプ。そのときの気分で、音楽を聞きながら......なんてこともありますけどね。

遠藤さんは、WSC・WPCで日本の選手らが着たユニフォーム姿でインタビューに答えてくれた
遠藤さんは、WSC・WPCで日本の選手らが着たユニフォーム姿でインタビューに答えてくれた

   J-CAST 2019年大会で記憶に残っているエピソードを教えてください。

   遠藤 団体戦のプレーオフで、上位を競っていた中国チームに逆転した瞬間が印象深いです。1チーム4人制で、今回は4か国がプレーオフに臨みました。中国チームは私たちよりも先に解き終わったので最初は、負けたと思ったんです。諦めかけた時間もあっただけに、チームとして最高の結果を得られた喜びは格別でした。今回のプレーオフは、数独の盤面が9個並べられて、4人で解くというスタイルでした。個人の実力とミスをしないことに加え、スピードとチームのコミュニケーション力が問われます。事前にメンバーが集まって練習できない分、緊張しました。解く技術があるのは大前提ですが、最後は体力と精神力の勝負です。

個人戦1位のメダル
個人戦1位のメダル

   J-CAST ものすごいプレッシャーにもめげず、結果を出した皆さんはすごいです! 遠藤さんは、数独の大会のあとにパズルの大会も控えていましたよね。2位という好成績でしたが、緊張が続く中、どんな気持ちで大会に挑んだのでしょう。

   遠藤 そうですね。WSCとWPCの間に1日休みがあって気持ちの切り替えにもなるんですが、疲れていたしWPCは3日間もあるので、現地ではあんまり個人優勝した気分に浸る余裕もなく、ましてや観光気分にもなれなかったですね(笑)。とにかく大会に集中することだけを考えていました。WPCでも個人優勝を果たしたかったですが、来年またチャレンジします。

   J-CAST 遠藤さんの中では、数独とパズルのすみ分けというか、こっちのほうが好きというのはありますか?

   遠藤 自分の中では、パズルの中にひとつのジャンルとして数独があるという感覚です。だからどっちが......とは思いません。ただ、問題のタイプという意味では、たくさん解いていると、自分が得意なものや不得意なものは分かってきます。

数独を始めたのは小学生から。大学でパズル同好会に入ってから世界が広がった

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   J-CAST いつから数独やパズルを始めたのでしょうか。

   遠藤 小学1年生くらいからです。はっきりとは覚えていませんが、新聞や雑誌に載っていた数独の問題を誰に勧められたわけでもなく、なんとなく面白そうだなと思って解いてみたのが最初だと思います。6年生の時に「ニコリ」の存在を知ってからは、親に本を買ってもらうようになりました。『数独通信』は創刊号も持っていますよ。

   J-CAST 小学生のときからずっと飽きずに続けてこられたのは、なぜだと思いますか?

   遠藤 解いた後の達成感があって、また数字が埋まっていくのが楽しかった。解き終えたら次にいこうと、満足するまで何問でもやっていましたね。それに解いている途中の経過も面白い。小学生のときには、イージーレベルからちょっと上くらいの問題を解いていたと思います。

   J-CAST そういうときに、難しい問題がきたらイヤになったりしない?

   遠藤 途中で投げ出したりはせず、割とできるまでトコトンやるタイプかもしれません。子どものころは難しい問題がきたら、何時間かかっても解けるまで向き合っていましたね。中学2年生のころには問題を作ることにもチャレンジしました。試しに雑誌に投稿したら採用されて嬉しかったのを覚えています。高校生まではひとりでコツコツと楽しんでいました。

   J-CAST 問題を解くのが楽しい人、作るのが楽しい人、楽しみ方はそれぞれですが、遠藤さんはどちら派ですか?

   遠藤 私は両方楽しいタイプです。問題を作る時には紙に書いたり、パソコンを使ったりその時に応じて使い分けています。ときには、海外の大会の作問チェックなどボランティアで手伝うこともあります。

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   J-CAST 大学生になって「パズル同好会」に入られたそうですね。それがきっかけで、世界大会への道が開けたのでしょうか。

   遠藤 そうなんです。一気に世界が広がりました。パズル同好会は高校生や社会人も交じって活動していました。私が入ったばかりの当時、メンバーは20人くらいで、自作の問題を持ち寄って解き合ったり、学園祭用にみんなでオリジナルの問題を考えたりと自由に楽しんでいましたね。

   J-CAST WSC2018年大会チャンピオンの森西亨太(こうた)さんは、パズル同好会時代の先輩にあたるとか。今回は先輩を超えての優勝でしたね。

   遠藤 森西さんには、パズルや数独に競技大会があることを教えていただき、世界を広げてもらいました。そこからWSCやWPCをめざすようになりました。世界中に知り合いも増えて、さらに楽しみが深まりハマってしまいましたね。
 今回はたまたま優勝できたけど、実力が上回ったとは思っていません。森西さんは、何年も好成績を残し続けている強者。いまでも解き方など教わることもありますから、また一緒に世界大会にチャレンジしたいです。

   J-CAST 数独、パズルの魅力はどこにあると思われますか。

   遠藤 5年前、10年前から比べると問題の質が上がっていて、解く度に新しい発見や驚きがある。それに、一緒に楽しめる仲間がいるのが一番の支えになっていると思います。

   J-CAST 次の目標を教えてください。

   遠藤 まだ成長過程だと思っているので、これからも歩みを止めずに行きたいです。次の大会の個人戦では、シード権があるので日本国内の予選は免除されます。だから恥ずかしくない成績は残したいです。また、団体戦でもチーム一丸となって連覇をめざしたいと思っています。

   J-CAST ほかにもチャレンジしてみたいことはありますか。

   遠藤 自分の世界を広げてもらって、お世話になった分、逆にお返しをしたい。数独の楽しさももっと多くの人に伝える活動を何かはじめたいと思っています。

   J-CAST もしかしたら、YouTubeで楽しさを伝えるなんてことも?

   遠藤 できたら面白いかもしれませんね。あとは、パズル競技の存在や楽しさを多くの人に知ってもらいたい。ハードルが高いと思われるかもしれませんが、飛び込んでみると意外と自分のペースで楽しめたりもする。こういう世界があることを知ってもらうきっかけづくりができればと思っています。

   編集後記
パズルや数独を通じて、人生が変わったという遠藤さん。前チャンピオンの森西さんとも旧知の仲で、お互いに尊重し合いながら選手として日本チームを引っ張っている様子を感じました。パズル作家としても活躍している遠藤さんと森西さんの共著『ナンプレ&パズルの世界チャンピオンからの挑戦状 ~王者が考えた100のパズル~』(実業之日本社)もぜひチェックしてください。


遠藤憲(えんどう けん)

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1993年生まれ、愛知県出身。小学生のころからパズルをはじめ、2011年に森西さんらの紹介をきっかけにパズル競技の世界へ。作問にも明るく、パズル作家として大会に問題を提供するなどの活動も行っている。

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