「数独は高齢者の生きがいづくりに役立ちます」岩手県大槌町から全国へ広がる支援の手【数独人に会うvol.6】

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川上誠さん
川上誠さん

   東日本大震災で大きな被害にあった岩手県大槌町。人口約1万人の小さな町で2014年秋ごろから仮設住宅に暮らすご高齢の方々を中心に数独ブームが起こり、いま全国へと広がりつつあります。

   大槌町での数独ブームの火付け役は、高齢者の生涯学習や自立支援活動を行うNPO法人ソーシャルハーツ(東京都世田谷区)代表理事の川上誠さんです。現在も定期的に現地へ赴き、支援活動を続けています。J-CAST数独ポータル編集部は川上さんに数独との出会いや活動について話を聞きました。

最初は受け入れられなかった数独、それでもみんな少しずつハマった

   J-CAST いつから高齢者の生涯学習や自立支援活動を始められたのでしょうか。

   川上 2013年2月にNPO法人ソーシャルハーツを立ち上げてからです。きっかけは11年の秋に宮城県や岩手県など数カ所の被災地を訪ねた際に見た、高齢の方たちの沈んだ顔です。世界に先駆けて超高齢化する日本ではシニアの活躍の場をつくるのが急務。そのノウハウを日本から世界へ向けて発信したい、という思いから活動を始めました。

   J-CAST なぜ大槌町を選ばれたのでしょうか。

   川上 行ったことがない町でしたが、雑誌で大槌町の紹介記事を読んで興味を持ちました。役場を訪ねてみると、当時、教育委員会生涯学習課の課長だった佐々木健さんが対応してくださった。佐々木さんは妻と娘、母親を津波で亡くしました。つらいに違いないのに淡々と現実を受け止めて話す姿に心を動かされました。「家族の分まで生きる」という力強い言葉は今でも忘れられません。
 大槌町は、一人暮らしの高齢者が多い地域。また交通の便が悪く、東京から車で片道8時間半かかるので、いずれ支援の手が少なくなるということも予想がつきました。

   J-CAST どんな活動をされたのでしょうか?

   川上 最初の2年間は息子と一緒に活動しました。月に2回通い、まずは地元の皆さんが何を求めていらっしゃるかを見極めたいと「はじめまして、川上親子です」とあいさつまわりから始めました。2~3カ月かけてヒアリングを続けると、少しずつ「学んでみたい」という声が聞かれるようになってきたのです。

   J-CAST 最初から数独をやりたいという声が上がったのですか?

   川上 いいえ。初めのうちは「仮設住宅の住所を漢字で正しく書きたい」とか「都道府県の位置を知りたい」といった生活に直結した要望でした。子どものころ十分に学校へ通えなかった80代、90代の方も多かったし、「鉛筆を持つのが久しぶり」という方もいました。それで大槌町にある高齢者支援センター「ぬくっこハウス」の一角を借り、気軽な学びの場を作ることにしました(ぬくっこハウスは2018年12月に閉鎖)。

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   J-CAST ていねいにヒアリングしたからこそ聞くことができた、リアルな声だったのですね。

   川上 「役場で堂々と住所を書けるようになってうれしかった」そのほかにも日本地図を見て地名を覚えたことで「今までなんとなく見ていた全国の天気予報を見るのが楽しくなった」などと言っていただけました。同じ教材では飽きてしまうので、間違い探しなど脳トレになる遊びも交えながら、手を替え品を替え活動を続けましたが、1年も経つとだんだんとネタ切れに。新たな教材はないかと探していたときに、数独と出会ったのです。

   J-CAST きっかけは何だったのでしょうか。

   川上 ある日、妻が「数独やってみたら?」と提案してくれたんです。私自身は数独を知らなかったので、さっそくネットで検索し何問か解いてみて、直感的に「これはウケるかも」と思いました。妻には本当に感謝しています。

   J-CAST 大槌町の皆さんの反応はいかがでしたか?

   川上 それが、数独の問題を見せた瞬間「うわー、数字苦手」「ダメダメ」と、まったく受け入れてもらえなかった。早々にあきらめようとしたとき、2、3人の方が「川上さんはいつも私たちのために、新鮮な教材を持ってきてくれるじゃない。数独っていうの? 一度やってみましょうよ」と言ってくださった。

大槌町で開いた数独教室の様子(提供:ソーシャルハーツ)
大槌町で開いた数独教室の様子(提供:ソーシャルハーツ)

   J-CAST まさに、救いの神!

   川上 そうですね。少人数からのスタートでしたが、1問解けたところで三重丸をつけ、大きく「100点」と書いて戻しました。すると思いのほか盛り上がって、周りの人たちも「何?面白いの?」と興味を持ち始めた。
 最初は解けなかった問題も、1カ月もすると解けるようになって、「やったー!」と肩を組んで喜び合ったり、ガッツポーズをしたりする姿が見られるようになりました。ガッツポーズをすると人は自然と笑顔になるんですね。皆さんの笑顔を取り戻したいという、私たちの思いが実現して、すごくうれしかったです。

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