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使い込むほど味が出る 伊勢木綿の「風呂敷」

   ものを包む布を「風呂敷」と呼ぶようになったのは江戸時代のこと。銭湯に出かけるとき、湯道具や衣類を包んで運んだり、衣服を脱ぎ着するときに敷いたりしたのが由縁と伝えられます。風呂で敷くから「風呂敷」と。

布団を仕舞うときにも風呂敷は重宝

唐桟縞#181の3枚接ぎ(約110センチ角)5500円。5枚接ぎの一反風呂敷(約200センチ角)は1万5000円。取扱いの臼井織布では、風呂敷は受注生産になるので納期は約2週間。
唐桟縞#181の3枚接ぎ(約110センチ角)5500円。5枚接ぎの一反風呂敷(約200センチ角)は1万5000円。取扱いの臼井織布では、風呂敷は受注生産になるので納期は約2週間。

   当時は木綿や麻で織った反物を接ぎ合わせてつくられ、小さな一幅から、布団なども包める五幅までの寸法がありました。

   近年では、持ち運びのために使うという役割は紙袋や布袋へと移行して、実用よりも冠婚葬祭や贈答の需要がほとんどになっています。

   しかし最近また、繰り返して使える、畳んで仕舞えばかさばらない、包む物の形を選ばないなど、その良さが見直されています。

   そしてもう一つ、風呂敷の良さは吸放湿性と通気性があることです。たとえば、押入に布団を仕舞うときにも、たいへん重宝します。

やわらかくて肌触りが良い「伊勢木綿」

染めた糸を織機にセットして織る。一反分、13メートルほどを織り上げるのに約一日かかる。(写真提供:臼井織布)
染めた糸を織機にセットして織る。一反分、13メートルほどを織り上げるのに約一日かかる。(写真提供:臼井織布

   伊勢木綿の名で知られる、三重県の臼井織布の木綿の風呂敷は、やわらかくて肌触りが良く、使い込むほど味が出ます。

   伊勢で木綿産業が盛んになった江戸時代、紺屋として始まった臼井織布。いまでも、化学薬品を使わず糸を精練し、藍や栗皮などの染料で染め、澱粉糊で糊付けし、織機で織り上げるまで、一貫して自社で行なっています。

   反物の幅は鯨尺の1尺(約39センチ)ですが、これを接ぎ合わせることで、かえって丈夫な風呂敷になります。

   3枚接ぎの風呂敷では、羽根布団が1枚、一反風呂敷(約200センチ角)なら敷蒲団2枚を包むことができます。木綿の風呂敷で包めば布団は蒸れにくく、汚れや日焼けの心配もありません。

   *『住む。』12号「働く布」では風呂敷を始め木綿や麻の1枚布について、『住む。』16号「布団屋さんに教わる、寝心地の決め手」では、布団を風呂敷に包んで仕舞う方法を、それぞれ紹介しています。



住む。表紙
◆住まいと暮らしの雑誌「住む。」 http://www.sumu.jp/
住まいと暮らしに関するいろいろな知恵や工夫が学べる季刊の雑誌。昔から伝わる気候風土に適した知恵、あるいは現代の先端技術などの知識を提供し、ときには、食や衣まで含めて考える。また家から排出されるCO2の量を削減したり、ゴミを減らすことなども考慮した「住まい」を考える。住まいは、暮らしこみの姿であり、生き方の表現。この雑誌では、そうした住まいと暮らしに関わるさまざまな知恵や工夫、そして住まいの本質を「知ること」が愉しめる。発行・泰文館。

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