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配管、溶接「二流三流」の原発 本当に「再稼働」させていいのか

   東日本大震災は東電福島原発事故という最悪の事態をもたらした。その原因、被害の実態、影響の広がり、事故の全容はまだまだ見えてこないが、1年が経過した今、いくつかの視点から改めて考えてみたい。J-CASTニュースの新書籍サイト「BOOKウォッチ」https://books.j-cast.com/でも特集記事を公開中。

決死の覚悟で危機に向かった戦士たち

『前へ! 東日本大震災と戦った無名戦士たちの記録』
『前へ! 東日本大震災と戦った無名戦士たちの記録』

   「稚拙で泥縄的」「連携不足」「組織的怠慢」。福島原発事故の対応をめぐる官邸や東電の不手際が明らかになってきた。首相は怒鳴ってばかりいたし、東電の社長は現場からの撤退を求めていたという。そんなトップの混乱と錯綜をよそに、決死の覚悟で未曾有(みぞう)の危機に立ち向かったプロの集団がいた。

   新潮社の『前へ! 東日本大震災と戦った無名戦士たちの記録』(著・麻生幾、1575円)は、事件や災害時の危機管理をめぐるベストセラーで知られる著者が、「書き残しておかねばならない」という強い思いで書き上げた壮絶な記録である。自衛隊、国土交通省・東北地方整備局、警視庁機動隊、東京消防庁ハイパーレスキュー隊、災害派遣医療チーム、福島県警・・・。名もなき戦士たちの命を賭けたドラマがここにある。

「千年に1度の大津波」が原因だったのか

『福島原発 現場監督の遺言』
『福島原発 現場監督の遺言』

   「想定外」という言い訳はもはや通用しない。福島原発事故は、「人災」だったという見方が広がる中、講談社から発売された『福島原発 現場監督の遺言』(著・恩田勝亘、1575円)は、事故原因は「千年に一度の大津波ではなく、配管の欠陥が主因ではないか」と主張する。

   著者が配管を重視するのは、福島原発の元現場監督で1級配管技能士の故・平井憲夫氏の内部告発に基づく。平井氏は「日本の原発は設計図は立派でも配管や溶接は二流三流、ずさんな工事やインチキ点検がまかり通っている、やがて大事故につながる」と警告していた。この現場からの告発を、「週刊現代」の元記者で原発の取材経験豊富な著者が検証したのが本書である。原発再稼働の動きが出ている今、一読をすすめたい。

人類は核エネルギーと共存できるのか

『原子力 その隠蔽された真実 人の手に負えない核エネルギーの70年史』
『原子力 その隠蔽された真実 人の手に負えない核エネルギーの70年史』

   広島、長崎の原爆投下を受けた日本は戦後復興へ向けて核の平和利用へ舵を切った。だが、築き上げたはずの原発の「安全神話」は、福島原発事故によりもろくも崩れ去った。飛鳥新社の『原子力 その隠蔽された真実 人の手に負えない核エネルギーの70年史』(著・ステファニー・クック、訳・藤井留美、2415円)は、核開発の歴史を辿りながら人類と核エネルギーの関係に根源から迫る。

   作家の池澤夏樹は解説でこう語っている。「フクシマで起こったことはすべて既にどこかで起こっていた。それが明らかになるから、この精緻なレポートは却って恐ろしいのだ。フクシマは偶然ではなく必然であったとわかるから」。日本版特別章として「3・11 巨大地震の襲来」を加筆収録している。