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【書評ウォッチ】英語との新しい向き合い方は? 「必要不可欠」「9割はムダ」

   日本人にとっての英語。やらなければいけない夏休みの宿題みたいなイメージがつきまとう問題を、主にビジネスの視点から日経新聞が読書面トップにしたてた。「どう向き合うか」を、従来型の考えを離れ、現代風のスタイルや新傾向を重点に紹介する。「社内公用語」とした企業に触発された企画だ。一方、小さなコーナーでビートルズの言葉を英語と日本語訳で並べた一冊を読売の書評が薦めている。【2012年9月23日(日)の各紙からI】

「他のもっと大事なことに時間を」

『英語のバカヤロー!』(古屋裕子編、アース・スターエンターテイメント)
『英語のバカヤロー!』(古屋裕子編、アース・スターエンターテイメント)

   ファーストリテイリングや楽天が英語を社内公用語にした。「さあ国際化の進展」「やりすぎ、バカじゃないの」と賛否をよんで、向き合い方をテーマにした出版が続いている。

   楽天の会長兼社長・三木谷浩史著の『たかが英語!』(講談社)はコミュニケーションツールにすぎないと強調する。「海外展開を加速し、成功するためには……英語は必要不可欠な媒体だと捉えているようだ」と、日経の評者・NHKの英語教育番組で知られる松本茂さん。堪能な社員10%程度の企業が会議以外でも英語の使用を求めたのはそのためだ。

   マイクロソフト日本法人の社長だった成毛眞著『日本人の9割に英語はいらない』(祥伝社)は、本当に英語を必要な人はたった1割。「残りの9割は勉強するだけムダ」と説く。他のもっと大事なことに時間を、との勧めだ。

おすすめは脱「きれいな英語」

   古屋裕子編『英語のバカヤロー!』(アース・スターエンターテイメント)は、各界で活躍する12人の英語が簡単でなかった経験談と意見。おもしろいのは米国で経営学修士(MBA)を取得した船川淳志著『英語が社内公用語になっても怖くない』(講談社+α新書)。英語イコール「ネイティブの英語」という幻想からの解放を主張している。

   『ビートルズの英語』(ザ・ビートルズ・クラブ著、集英社インターナショナル)を、社会学者の橋爪大三郎さんが読売で。リバプール訛りで、下町べらんめえ調。「活きがいい英文に、単語の説明もついて、学習参考書も兼ねている」「ビートルズ魂ここにあり」と称賛しきりだ。

   松本さんは英米人の「きれいな英語」をマスターするという従来スタイルから、アジアの英語を素材に「通じるかどうか」を基準にと提唱する。新鮮な考え方は傾聴に値するが、この日経記事は日本語とのバランスをふくむ文化論の側面がうかがわれず、半分以上が企業英語の問題。論じるのが英語教育の専門家だから無理もないが、広いスタンスでさまざまな角度から論じる企画もほしいところだ。それぐらい、この問題は根深い。

(ジャーナリスト 高橋俊一)