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「人質事件」機に「イスラム世界」を知る その歴史とタブーと考え方

   イスラム武装勢力によるアルジェリア人質事件は日本人に改めてイスラムとは何かを突き付けた。日本は中東を中心とするイスラム世界に石油の約9割を依存している。しかし、われわれはイスラムのことをどこまで知っているだろうか。イスラムを知るために読んでほしい3冊を紹介する。J-CASTニュースの新書籍サイト「BOOKウォッチ」(https://books.j-cast.com/)でも特集記事を公開中

ムハンマドの生涯から9・11同時多発テロまで

『イスラームの歴史1―イスラームの創始と展開』
『イスラームの歴史1―イスラームの創始と展開』

『イスラームの歴史1―イスラームの創始と展開』

   宗教を抜きに世界と世界史を考えることはできない。歴史書で定評のある山川出版社が、人間の歴史に宗教がどうかかわってきたのか、という観点から刊行した『宗教の世界史』。その11巻が『イスラームの歴史1―イスラームの創始と展開』(編・佐藤次高、3675円)、12巻が『イスラームの歴史2―イスラームの拡大と変容』(編・小杉泰、3675円)だ。イスラムについて本格的に学びたい人にとって最適の教科書といえよう。

   「イスラーム世界1」は7世紀初頭から18世紀までを、「同2」はそれ以降を扱う。単なる通史ではなく、ムハンマドの生涯から2001年の9・11同時多発テロまで、イスラムの展開とその拡大が国際社会に与えた衝撃と意義を考える。現代日本の第一人者らによるイスラムの歴史である。

豚から見えてくるイスラム

『愛と憎しみの豚』
『愛と憎しみの豚』

『愛と憎しみの豚』

   豚カツやカツ丼は子どもから大人まで日本人の好きな食べ物だ。日本ばかりではない。豚肉は世界の各地で様々な料理に使われている。だが、その一方で激しく嫌う人たちもいる。それはなぜなのか。集英社の『愛と憎しみの豚』(著・中村安希、1680円)はそんな素朴な疑問から豚をめぐる謎を追ったノンフィクションである。

   47か国をめぐる旅をもとに書いた『インパラの朝』で開高健ノンフィクション賞を受賞した著者は、今度もまた灼熱のアラブからイスラエル、東欧、極寒のシベリアへと旅を続ける。豚は人に挨拶するし、カメラを向ければポーズをとるのだそうだ。そんな豚との付き合いを通して、イスラム教徒はなぜ豚を拒絶するのかを探る。豚からみた、もうひとつのイスラム案内である。

複雑な背景をわかりやすく

『<中東>の考え方』
『<中東>の考え方』

『<中東>の考え方』

   パレスチナやイランの問題をはじめとして、世界の火薬庫といわれる中東で起きていることは、国際政治を揺るがす深刻な問題でありながら背景が複雑でなかなか理解しづらい。中東情勢やイスラムについてわかりやすい本はないものか。講談社現代新書の『<中東>の考え方』(著・酒井啓子、798円)は、そんな要望にこたえようと中東の専門家によって書かれた入門の書だ。

   石油資源に恵まれた中東の国々が大国とどうようにわたりあってきたか、イスラム主義とイランの行方、ジャスミン革命につがったメディアの影響など、新聞やテレビのニュースを理解するうえですぐに役に立つ知識と情報がコンパクトにまとめられている。長年にわたり中東と取り組んできた著者の中東に対するまなざしが感じられる内容となっている。