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【書評ウォッチ】自民「右傾化」を読む 機関紙連載に見る保守の行方

   安倍自民党が政権を取り戻して1月半。アベノミクスとやら景気刺激策のおかげなのか、円安が進んで株価が上がり、一部の企業や土建屋さんは大喜びだそうだ。うかれていないで、ここらで自民党の保守政治について見きわめておこうという指摘が朝日新聞読書面に出た。

   『「常識」としての保守主義』(櫻田淳著、新潮新書)をとりあげながら保守と国防軍創設や憲法改正など「右傾化」の関係を一橋大の政治学者・中北浩爾さんが解説。「安倍政権の安全運転は、次の参院選までのはずだ」と。で、それから露骨に右旋回するのだろうか。【2013年2月10日(日)の各紙からⅠ】

ご推薦のオンパレード

『「常識」としての保守主義』(櫻田淳著、新潮新書)
『「常識」としての保守主義』(櫻田淳著、新潮新書)

   この本、実は自民党の機関紙に2009年から2年間にわたり掲載された文書をまとめた。「保守政治とは何か……右翼やタカ派とイコールではない……伝統を尊びつつも、柔軟かつ大胆に新しいものを取り入れ、中庸を美徳とする」と出版社サイトは強調する。著者自身も「右翼という政治上の立場や、民族主義性向とは重ならない」という立場。ド・ゴールや吉田茂から学んだのだそうだ。

   これを、麻生太郎元首相(現財務相)や党総裁時代の谷垣禎一氏(現法相)が推薦、本の帯には「石破茂氏絶賛!」とある。河野太郎氏も関心をよせる。ちょっと調べただけで、保守度・リベラル度さまざまな自民党政治家のご推薦オンパレードだ。

まさか猫かぶりの仮面?

   民主党に対抗して自民党が主義を強調するようになった時期に文が書かれた事情もある。朝日紙上で中北さんは「その過程で生まれた最良の成果」「おおらかな保守主義に近い」と評価する一方、自民党はその後結局「『右翼』へと傾斜していった」と受けとめる。

   この観察が正しいかどうか。少なくとも、政権交代後のムードに浮かれていないで、政治の行方を考えておく必要はある。タイムリーな問題だ。安倍政権の一見穏やかな表情がもし猫かぶりの仮面だとしたら、夏の参院選後がなんとも不気味。

   『政治はなぜ嫌われるのか』(コリン・ヘイ著、岩波書店)が読売新聞に。「政治家は自分の利益しか考えていない」といった気分は世界共通。自己利益を図る政治家や公務員、すると棄権者が増える。悪循環。そこから民主主義の取り戻し方を考えた。「一考に値する」と、評者の政治学者・宇野重規さん。でも、今の政治家を好きになれる人は少ないだろうな。

(ジャーナリスト 高橋俊一)

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