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【書評ウォッチ】キャリア育成機関に変貌する女子校 「地頭の良さ」「空気読まない力」に企業が注目

   女子校というと、中年以上にはなぜか懐かしい響き? とんでもない。女子高・女子大出身者の感性や行動力が今、企業社会で注目されているそうだ。『女子校力』(杉浦由美子著、PHP新書)が読売新聞に小さく載った。「深窓の令嬢」「良妻賢母」のイメージを持つこと自体がもう古い。キャリア育成機関に変身しつつある女子教育と彼女たちの現状を、自身も女子校出身のライターが追いかけた。【2013年6月2日(日)の各紙からII】

多彩な個性と自由な環境

『女子校力』(杉浦由美子著、PHP新書)
『女子校力』(杉浦由美子著、PHP新書)

   女子校離れと一時、よく言われた。少子化が深刻に論じられるより前から、「古い制度ではないか」「女の園は人間関係がどうも」などと悪口を言われてきた。ところが、実際には異性がいない学校空間にいま問題のスクールカーストは形成されず、グループ同士の対立もあまりない。多彩な個性が共存し、やりたいことを自由にやれる環境だという。

   良い評価ばかりではない。そこで育つと、往々にして空気を読めないとの批判もあるらしい。「物言いが率直すぎる」「言葉の裏がわからない」、果ては「男のメンツを平気で踏みにじる」とまで。

   しかし、「空気ばかり読んで発信力に乏しい学生が増える昨今、彼女のたちの地頭の良さは、企業から注目されてもいる」とは読売の無署名書評。自分の考えを主張できることは、万事横並び社会では独特の存在感に通じる。ひょっとすると閉塞社会を打ち破る発想とパワーを秘めているかもしれない。

   本は女子校出身者の「空気を読まない力」がどう作用していくのかを、女子学院、フェリス、吉祥女子、雙葉などの卒業生・在校生78人へのインタビューや教師、受験関係者への取材から考えた。世間の視線に悩むことは? 男性への免疫度は? 共学校との違いは? 多彩な視点から女子校女子の一端を読者は知ることができそうだ。

非正規雇用者の賃金を優先的に上げるべきだ

   『少子化論』(松田茂樹著、勁草書房)を朝日新聞が。始まって20年たつのに出生率が上がらない少子化対策を「根本的な誤り」と批判、今の制度と通説を見直す姿勢が随所にある。

   問題は「未婚化」と、本はとらえる。非正規雇用の増加や低収入、家族からもれる人がいることを指摘。非正規雇用者の賃金を優先的に上げるべきだという意見だ。

   育休制度についても言及。穴埋めを求められる社員の負担増を考えて、むしろ総合的な労働時間減が必要と説く。「この国の、今ここにある危機を読み解くガイドとなる一冊」と評者の詩人・水無田気流さんが薦めている。

(ジャーナリスト 高橋俊一)

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