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【書評ウォッチ】体にいいって健康法「全部」やってみた 実体験ジャーナリストの猛烈トライ

   健康ブーム。こうすればやせられる、ああすれば血圧によいなどなど。その種の本や関連グッズがあふれ、街ではランナーが走りまわる。一方、これらがどこまで効果的かを疑う・迷う人も同じぐらい多いはず。で、さまざまな方法を2年にわたってトライした体験記『健康男 体にいいこと、全部試しました!』(A.J.ジェイコブズ著、日経BP社)が読売新聞に。ばからしく思えることもクソまじめに。本自体も歩きながら書きあげた、総歩行距離1800キロだとか。いやー、お疲れさま。【2013年6月9日(日)の各紙からI】

健康選択肢の迷宮をさまよう現代人

『健康男 体にいいこと、全部試しました!』(A.J.ジェイコブズ著、日経BP社)
『健康男 体にいいこと、全部試しました!』(A.J.ジェイコブズ著、日経BP社)

   著者は、何でも体を張って挑戦する実体験ジャーナリスト。肺炎で緊急入院したベッドの上で「世界一ヘルシーになる」と決意した。最新の健康法をリストアップ、それが53ページにわたり、100以上の健康法を分析。情報洪水に惑わされない「中年男女必読の一冊」をまとめたという。

   原始人の生活がよいと聞けば、裸足のまま四つんばいで公園をうろつく。動物がストレスを軽減するとの情報には、公園で犬に触りまくる。洋式トイレを和式トイレに切り換えてもみた。わかったことは「悪態をつくと痛みが和らぐ」「和式トイレのほうが痔になりにくい」などらしいが、結論は「何ごともほどほどに」だとか。

   これらがユーモアたっぷりに書かれている。著者が「世界一ヘルシー」の野望を達成できたかは、読んで解釈するしかない。「この一冊で健康本56冊分」とのPR文句までいくと、にわかに信じるわけにはいかない。

   「浮かび上がるのは、限りない選択肢の迷宮の中で溺れかけている現代人の病理だ」と、読売評者の星野博美さん。世の一面を描き出したことはまちがいない。

東京の懐かしい香りと貴重な雰囲気

   ほかには、『東京放浪記』(別役実著、平凡社)を東京新聞が紹介している。小市民社会の悲喜劇を軸に独特の演劇を想像してきた著者が、東京の街と昭和という時代をとらえたエッセイ集。

   長野から出てきて目黒、芝、六本木、広尾、永福町と移り住むたびに受けた刺激。著者の仕事場は自宅よりむしろ街それぞれにある喫茶店だったそうだ。「静かな文章で、都会を放浪する演劇人としての人生模様を描いているが、文章の合間から東京の懐かしい香りが届いてくる」とは評者・佐藤洋二郎さんの読後感。そういう場所が少なくなっている今だからこそ、貴重な雰囲気の記録なのだろう。

(ジャーナリスト 高橋俊一)

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