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【書評ウォッチ】辞書作りはこんなに活動的 居酒屋、キャバクラで言葉の収集も

   辞書ってどうやって作るの? 問われれば「ん」と、たいていの人は答えにつまってしまう。『辞書を編む』(飯間浩明著、光文社新書)は、その過程やエピソードを紹介する一冊。ベストセラーとなった三浦しをんの小説『舟を編む』のノンフィクション版だ。

   どんな大作も、作るのは人。辞書もコツコツとした作業の、実に膨大な集積物。その情熱と根気と努力を『三省堂国語辞典』第七版編集委員の1人が活写した。【2013年6月16日(日)の各紙からII】

評者も驚嘆する人間味

『辞書を編む』(飯間浩明著、光文社新書)
『辞書を編む』(飯間浩明著、光文社新書)

   「これほど人間味に溢れる書物だったとは!」と、読売新聞で評者のエッセイスト・平松洋子さんが驚嘆している。本は国語辞典作りの手順にそって編集現場の日々を語っていく。

   中でも読ませるのは第2章の「用例採集」だろう。社会で実際に使われている言葉を集める作業。著者はこれが「至福の時」だというが、要は、なんでも集めてみる。NHKBSの「黒澤明特集」で全黒澤作品を放送すると聞けば、全部見て、気になった言葉や言い方を片っぱしからメモする。聞きとれない個所はシナリオで確認する。「鑑どり」(関係者への聞きこみ捜査)、「お引き回し願います」(お世話になります)などがここから。

   新語の収集、旧版記述の修正も、こうした一つ一つがあってこそ。そのためなら居酒屋、タレントショップ、ときにはキャバクラにも。「ブログ」「ツイッター」といった新語も、もちろん逃せない。考えれば、時代とともに変わる言葉を集めるのに魔術はない。ひたすら探して記録する。

いかに魅力に満ちた書物なのか

   そのうえで数万語から絞り込む「取捨選択」や語句を他書よりわかりやすく解説する「語釈」の作業に入る。従来の解説にも手を加え「新陳代謝を促す」という。「辞書は生き物なのだ」と平松さん。「国語辞典がいかに魅力に満ちた書物であるかを伝える」と三省堂のサイト。生きた数万語を要領よくまとめた芸術的な日本語文化がここにある。

   ほかには『生まれ変わる動物園』(田中正之著、化学同人)が朝日新聞に。旭山動物園がブレークして一般の関心も高いが、この本はもっぱら調査研究の面から。京都市動物園のチンパンジーやマンドリル、アジアゾウなどの生態にも触れながらあるべき姿を考えた。

   本は「種の保存」「教育・環境教育」「調査・研究」「レクリエーション」の4つを動物園の目的にあげている。レジャーも重要だが、それだけではないのだ。評者は川端裕人さん。

(ジャーナリスト 高橋俊一)

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