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【書評ウォッチ】ディズニーリゾート周辺の光と影 「外国人力士だらけの土俵」の風景

   東京ディズニーリゾートの入場者総数が今年、5億人を超えたという。それがあるのは東日本大震災で液状化の被害にゆれた千葉県浦安市。巨大テーマパークと周辺の光と影を考えた『ディズニーの隣の風景』(円堂都司昭著、原書房)が日経新聞に。

   税収、集客力、知名度アップへの貢献など恩恵ははかりしれない。地元の成人式やパレードも盛り上げるのもミッキーマウス。ディズニーに限らず、今や大規模施設やイベント、観光名所などと地域との関係は、まるで日本中が「オンステージ化」したみたいだととらえた視点はなかなか鋭い。【2013年7月21日(日)の各紙からI】

日本全国テーマパーク化

『ディズニーの隣の風景』(円堂都司昭著、原書房)
『ディズニーの隣の風景』(円堂都司昭著、原書房)

   ディズニーシーと同じ2001年にオープンした浦安市郷土博物館には漁村だったころの浦安の家並みが再現されていて、東京ディズニーリゾートを中核に大変貌を遂げた地元地域との極端なまでの違いがよくわかる。ディズニー側は地元に気を使い、イベントにキャラクターを参加させ、昨年はミッキーマウスや東京ディズニーランドのアンバサダーが浦安市長を表敬訪問した。

   しかし、「本当の意味で対面し表敬しているのはミッキーではなく市長なのではないか」と著者は指摘する。たしかに、ディズニーとの友好関係維持が地元市の重要課題だ。おもしろいのは、浦安市がディズニーリゾートのみならず、街全体がテーマパークであると宣言したこと。著者はこうした現象が全国に広がっているという。

   住民一人一人がキャストとして祭や町おこしに参加する「オンステージ化」「テーマパーク化」。各地に広がったYOSAKOIダンス、ゆるキャラ、B級グルメ、ご当地アイドルなどを本はとり上げていく。

郷土愛だけではないビジネスモデル

   これらを郷土愛だけではなく「ビジネスモデルに昇華させている」と日経の評者・立命館大学の石﨑祥之さんは受けとめるが、著者は必ずしも手放しで礼賛してはいない。「外国人力士だらけの土俵に似た風景」だとの指摘が、そこにある二面性を言いあてている。

   「オンステージ化」は地域にとって救いなのか、皮肉な珍現象なのか、答えはこれからだろう。あるいは、もうこれしかないのだろうか。

   ほかに『ディズニー こころをつかむ9つの秘密』(渡邊 喜一郎著、ダイヤモンド社)や『新版 ディズニーリゾートの経済学』(粟田房穂著、東洋経済新報社)を評者は挙げて、ビジネスモデルやマーケティングといったディズニー資本の経営面を読み解いている。

(ジャーナリスト 高橋俊一)

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