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「和食」が文化遺産になった理由 「菊乃井」に学ぶ簡単レシピ

   「和洋中華」のいずれにするか。忘年会幹事の悩みの種だが、和食がユネスコの無形文化遺産に登録された今年は、やはり和食が多数派だろうか。高級懐石からすし、てんぷら、お茶漬けまで色々あって、単なる美食ではない。世界に誇るべき日本の食の魅力について、味わい方や調理法、さらには歴史まで遡り、もっともっと知っておきたいことがある。

   J-CASTニュースの新書籍サイト「BOOKウォッチ」(https://books.j-cast.com/)でも特集記事を公開中。

海外一流シェフがなぜ注目するのか

和食の知られざる世界
和食の知られざる世界

『和食の知られざる世界』

   なぜ、世界は和食に注目するのか。なぜ、一流シェフたちは和食に驚嘆するのか。無形文化遺産登録に当たって和食の特徴として挙げられたのは、新鮮な食材を生かした調理、健康食としてのバランスの良さ、自然の美しさや季節感の表現、伝統的な行事とのかかわりの4点だそうだが、新潮社の新潮新書『和食の知られざる世界』(著・辻芳樹、756円)は、まだまだ知られていない和食の奥深さを探る。

   現在の辻調理師専門学校を設立した著者の父親、辻静雄は読売新聞記者から転じて、日本に本格的なフランス料理を紹介するとともに、世界に和食の素晴らしさを紹介した著名な料理研究家だ。その父から英才教育を受け、早くから英米に渡り、和食の海外発信にも取り組んできた。父の後を継いだ辻調グループ代表が語る和食の神髄とは。

春夏秋冬毎日のおかずをおいしく

京のおかず 四季のかんたんレシピ124
京のおかず 四季のかんたんレシピ124

『京のおかず 四季のかんたんレシピ124』

   和食といっても、高級料亭の料理ばかりではない。味噌汁に焼き魚、野菜の煮物、漬物も立派な和食だ。阪急コミュニケーションズの『京のおかず 四季のかんたんレシピ124』(著・村田吉弘、1365円)は、そんな日々のおかずに京都の和食の特徴を取り入れた春夏秋冬それぞれ31ずつ計124のレシピを紹介したものだ。

   教えるのは京都の老舗料亭「菊乃井」の3代目主人だが、難しいことは言わない。「家庭のおかずは、毎日つくるもんなので、無駄なく、簡単に作れることがいちばんです」「使っている食材はどこでも手に入るもん。短時間で作れ、下ごしらえすれば10~15分でできる献立。なにより、おいしいことをポイントに作ったレシピです」と趣旨を説明する。これで、毎日、京の味を楽しめたら、文句はいえない。

先史時代から今日までの変遷

和食と日本文化 日本料理の社会史
和食と日本文化 日本料理の社会史

『和食と日本文化 日本料理の社会史』

   戦後の食糧難の時代は、とにかく腹いっぱい食べることが関心事だった。高度成長を経て飽食の時代を迎えると、食事は量から質へと変わり、和食が見直されるようになった――。戦後70年ほどの間にも、日本人の食を取り巻く状況は大きく変化したが、小学館の『和食と日本文化 日本料理の社会史』(著・原田信男、2100円)は、旧石器、縄文、弥生時代からの変遷をたどり、今日の食生活がどのように成立したかを検証したものだ。

   古代国家における料理体系、精進料理と仏教文化、茶の湯と懐石料理、西洋料理や中国料理との出会いなど、食と文化の歴史が興味深く語られる。歴史学者として生活文化の幅広い視点から研究を続けてきた著者の和食に関する集大成であり、日本の食文化の教科書ともいえる1冊だ。