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【BOOKウォッチ】
日本ウイスキー知って飲んで、「朝」も楽しく

   ここのところ好調なNHK朝の連続テレビ小説。9月29日からスタートするのが「マッサン」だ。マッサンとはニッカウヰスキー創業者の竹鶴政孝の愛称である。彼はスコットランドにウイスキー造りを学びに出かけ、妻であるリタと出会う。連ドラ史上はじめて外国人がヒロインということで何かと話題を集めている。ストーリーがもっと味わい深くなる関連書籍を紹介しよう。

   J-CASTニュースの新書籍サイト「BOOKウォッチ」https://books.j-cast.com/でも特集記事を公開中

"もっている男"は本物志向

ウイスキーと私
ウイスキーと私

『ウイスキーと私』

   ドラマのタイトルは「リタ」でなく、竹鶴政孝の愛称「マッサン」。「あまちゃん」「ごちそうさん」「花子とアン」とタイトルの最後に「ん」がつく3期連続の右肩上がりの視聴率がそのまま継続するようにということで、「マッサン」になったのかもしれない、そして竹鶴政孝本人のもっている「運」の強さにもあやかろうということかもしれない。じっさい、竹鶴政孝は運を持つ男であった。

   NHK出版から復刻された『ウイスキーと私』(著・竹鶴政孝、1620円)は日本経済済新聞「私の履歴書」竹鶴政孝編の連載がベースになってまとめられたもの。ドラマの核ともなる妻リタへの思いはもちろん、ウイスキー造りへの熱意、苦労が丁寧に語られ、日本のウイスキー史を学ぶには超一級の資料でもある、と同時に若いときから彼がどれだけ本物志向であったか、いかに多くの人間に愛され請われていたか、そして、強い「引き」を持つ男であったか、が、淡々と語られる数々のエピソードからにじみ出ている。

女王陛下に飲んでいただきたい

日本ウイスキー世界一への道(集英社新書版)
日本ウイスキー世界一への道(集英社新書版)

『日本ウイスキー世界一への道』

   イギリスから遠く離れた極東アジア、日本という国で本格的なウイスキー造りに取り組んで、しかもウイスキー愛好家を増やしている。だからエリザベス女王から勲章をもらってもいいぐらいだ、そんなふうに竹鶴政孝自身がユーモアたっぷりに語ったことが『ウイスキーと私』のなかで紹介されている。

   残念ながらマッサン自身は女王陛下から勲章をいただく機会はなかったのだが、彼の想いや技術を受け継いだ日本のウイスキーブレンダーが、世界のウイスキーの賞で最高賞を受賞するという栄誉に輝き、いまやジャパニーズウイスキーはスコッチウイスキーやアイリッシュウイスキーなどと肩を並べて、「世界五大ウイスキー」の一つに数えられるほどになっている。たとえば味覚の評価が厳しいフランスでは、日本のウイスキーならではの繊細さが高く評価され、「フレンチとウイスキーのマリアージュ」なるイベントも開催されるほどなのだ。

   集英社の『日本ウイスキー世界一への道』(著・嶋谷幸雄、輿水精一、Kindle版648円)は、世界を驚かせたウイスキーがどのようにして造られたか、至高の技術を紐解いた一冊である。

ボトルに詰まった「ロマン」を感じる

シングルモルト&ウイスキー事典(学研パブリッシング版)
シングルモルト&ウイスキー事典(学研パブリッシング版)

『シングルモルト&ウイスキー事典』

   『ウイスキーと私』『日本ウイスキー世界一への道』の両書がウイスキー造りの人間が書いたものであるのに対して、『シングルモルト&ウイスキー事典』(著・北村聡、Kindle版1350円)はウイスキーを楽しむ立場からの書である。

   事典と名がつくとおり、ウイスキーの産地や銘柄がわかりやすく解説されている。味の特徴、醸造所の歴史などが系統たてて説明されるほか、飲み方のアレンジほか、あれこれとコラムも充実していて、ウイスキー入門者だけでなく、中級者も十分楽しめる内容になっている。

   「ウイスキーを飲むことはボトルに詰まった『ロマン』を飲むこと」とは、前書きにあった一文。自宅でグラスを傾けながらの独学もよし、本書の監修者・北村聡氏の銀座の店「BAR洋酒博物館」に足を運んで、復習もこれまたよしである。