2020年 4月 3日 (金)

ピアノ曲の新ジャンルになったメンデルスゾーンの「ヴェネツィアの舟歌」

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   1909年の生まれで、翌年に生まれたショパンとシューマン、そして、翌々年生まれのリストなどとともに、19世紀に花開いた「ロマン派」音楽を牽引した一人が、北ドイツ・ハンブルク出身で、ベルリンやライプツィヒで活躍したフェリックス・メンデルスゾーンです。

   彼はこの連載でもバッハを復活上演し、少し前の時代の音楽=クラシック音楽を聴く、という習慣を定着させたり、ピアノのための無言歌集(春の歌)といった弾きやすいピアノのための小品を作曲して、ピアノ音楽の一般への普及を後押ししたり、と演奏においても、作曲においても、音楽史上誠に重要な活躍をした音楽家でした。

  • メンデルスゾーンの肖像
    メンデルスゾーンの肖像
  • ヴェネツィアの舟歌 第1の楽譜 直訳すると『ヴェネツィア風ゴンドラの歌』
    ヴェネツィアの舟歌 第1の楽譜 直訳すると『ヴェネツィア風ゴンドラの歌』
  • ヴェネツィアの舟歌 第2 冒頭から陰鬱な感じのメロディーで始まる
    ヴェネツィアの舟歌 第2 冒頭から陰鬱な感じのメロディーで始まる
  • ヴェネツィアの舟歌 第3 この後に続く「舟歌」の嚆矢となった
    ヴェネツィアの舟歌 第3 この後に続く「舟歌」の嚆矢となった

裕福で理解ある家に生まれたメンデルスゾーン

   ロマン派、特に19世紀前半に活躍した作曲家は、それ以前の「古典派」と呼ばれる時代と違って、家業としての音楽家ではない場合が多くなっていました。例えば、バッハ、モーツァルト、ベートーヴェンは、レヴェルの差こそあれ父親が音楽家でしたが、上記ロマン派の4人は、銀行家、フランス語教師、出版業者、貴族の土地管理人・・と、本業が音楽であった人は誰もいません。これは、音楽に限らず、他の芸術分野でも同じですが、ロマン派の時代は、職業選択の自由がある程度確保され、本人の才能によって、その分野で名をあげることが可能になった時代、といえるでしょう。フランス革命に端を発した「平等な社会」は、確実に実現しつつあったのです。

   メンデルスゾーンは、ロマン派を牽引した作曲家の中でも、異色の存在でした。若き芸術家というのは大体貧乏生活からスタートするものですが、彼は、裕福で理解のある家庭に恵まれたため、若いころから、見分を広めるために、広く国外を旅するのです。それは、まさに19世紀イギリスなどの貴族の子弟が行った、イタリアなど大陸の南の国を目指す「グランド・ツアー」と同じような旅でした。

   恵まれた家庭環境のものと、音楽だけでなく、文学、語学、哲学、そして美術も勉強していたメンデルスゾーンは、自らも、絵筆を持ち、絵画にも並々ならぬ興味がありました。彼は、20歳の時、各地で演奏しつつ勉強するために、旅立ったのですが、そこには、各地の歴史的名画を自分の目で見る、という目的もありました。ティッツィアーノ、ヴェロネーゼ、ティントレットなどのヴェネツィア派の絵などは、彼に鮮烈な印象を与えたはずです。

   同時に、水の都という独特の風景も、メンデルスゾーンに強い印象を与えたようです。この「グランド・ツアー」中から書き始められ、結果的に彼のピアノ曲のライフワークにして、一番の人曲集となった「無言歌集」・・・最終的に、生涯で6曲×8巻=48曲のピアノの小品を集めた曲集となります・・・の中に、彼自身がタイトルを付けた「ヴェネツィアの舟歌」という曲が登場するのです。

本田聖嗣プロフィール

私立麻布中学・高校卒業後、東京藝術大学器楽科ピアノ専攻を卒業。在学中にパリ国立高等音楽院ピアノ科に合格、ピアノ科・室内楽科の両方でピルミ エ・ プリを受賞して卒業し、フランス高等音楽家資格を取得。仏・伊などの数々の国際ピアノコンクールにおいて幾多の賞を受賞し、フランス及び東京を中心にソ ロ・室内楽の両面で活動を開始する。オクタヴィアレコードより発売した2枚目CDは「レコード芸術」誌にて準特選盤を獲得。演奏活動以外でも、ドラマ・映画などの音楽の作曲・演奏を担当したり、NHK-FM「リサイタル・ノヴァ」や、インターネットクラシックラジオ「OTTAVA」のプレゼンターを 務めるほか、テレビにも多数出演している。日本演奏連盟会員。

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