2024年 4月 20日 (土)

科学的知見に裏打ちされた エネルギーの将来を描く「新しい視点」

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   ■『エネルギー産業の2050年 Utility3.0へのゲームチェンジ』(竹内純子編著、伊藤剛・岡本浩・戸田直樹著 日本経済新聞出版社)

   世界的に高水準にある我が国の電気料金は、今後どうなっていくか。

   国民生活の未来は、エネルギー政策の選択次第で大きく変わりうることを示す本書は、電力供給のテクニカルな議論と、IT技術の進展や少子高齢化といったマクロ的な議論を丁寧に織り合わせる。技術の進展を予測することは難しいため、仮定しつつの議論にならざるを得ないが、そうした多くの変数を冷静に比較衡量しつつ論を進める筆致は、十分な説得力を有する。

   原発ゼロを政策として主張する方々にも、是非一読をお勧めしたい。

日本の将来を左右するエネルギー政策

   本書は、まず第一章で、明暗二通りの未来予想図をプロローグとした上で、エネルギーをめぐって不可避的に生じる5つの変革を掲げる。すなわち、Depopulation(人口減少)、Decarbonization(脱炭素化)、Decentralization(分散化)、Deregulation(自由化)、Digitalization(デジタル化)の「5つのD」である。

   第二章は、それぞれの変革が電気の小売りや発送電の事業に及ぼす影響を論じる。なるほど大きな変化が生じつつあり、政策の選択の仕方一つが将来の社会を規定することが理解できる。

   そしていよいよ第三章、そのタイトルを「ゲームチェンジ」とする編著者の意気込みを感じつつ、そこに展開される「Utility3.0」の世界を味わうことになる。

   Utility1.0が「電力の鬼」と呼ばれた松永安左エ門翁に象徴される地域独占体制とすれば、Utility2.0は発送電分離等の自由化後の世界と規定される。

   対してUtility3.0は、IoTの深化により、消費者は電力を購入するのではなく、それによって稼働する家電製品から得られる効用そのものを購入する世界である。

   プロローグで示された明るい未来像が具現化するのではないかという期待感と、そこに向けてエネルギー政策を自らの選択として考える重要性を気づかせてくれるのがこの章だ。

   なお、第三章の後段、原子力行政のあり方を語り、あるいは過疎地の問題を取り上げる部分は、Utility3.0が提示する未来像と懸隔がある。但し、これら課題の解決なくして安価で安定的な電力供給は困難だ。その意味で、これらの解決は、Utility3.0を実現させる前提条件と言えるのだろう。

【霞ヶ関官僚が読む本】現役の霞ヶ関官僚幹部らが交代で「本や資料をどう読むか」「読書を仕事にどう生かすのか」などを綴るひと味変わった書評コラムです。

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