2024年 4月 17日 (水)

「ギタースタイルのピアノ曲」が大ヒット アルベニスの「アストゥリアス」

   先週は、フランス人、シャブリエが作曲した「狂詩曲 スペイン」を取り上げましたが、今週はスペイン人が描いたスペインの曲を1曲取り上げましょう。アルベニスの「アストゥリアス」です。

   アルベニスは、以前にもこの連載で代表的ピアノ曲集「イベリア」を取り上げましたが、19世紀後半から花開いた、スペイン音楽を代表する作曲家であり、また優れたピアニストでした。残念ながら、古典派からロマン派初期にかけては、音楽後進国だったスペインでは、教育機関が未整備で、自国のすぐれた作曲家や、そして...録音がない時代ですので確定的なことは言えませんが...一流器楽奏者を多数揃えることもおそらく困難であったはずで、管弦楽作品やオペラが盛んになる、ということがありませんでした。

  • 「スペインの歌」の1曲目だった「アストゥリアス」のピアノオリジナル楽譜。「前奏曲」としか書かれていない
    「スペインの歌」の1曲目だった「アストゥリアス」のピアノオリジナル楽譜。「前奏曲」としか書かれていない
  • 「スペインの歌」の1曲目だった「アストゥリアス」のピアノオリジナル楽譜。「前奏曲」としか書かれていない

「放浪のピアニスト」から母国のスペイン音楽づくりに目覚める

   しかし、19世紀に急速に発達したピアノという楽器は一人でオーケストラ作品を弾けるぐらい豪華な音を出せるようになったので、スペインからも、たくさんの才能のあるピアニストが輩出されたのです。そして、活躍の舞台をもとめて、スペインから外国、特に隣国フランスなどへ演奏活動に赴きました。同じ時期、音楽中心国であったフランス・ドイツ・イタリアでは、その周辺国――はっきり言ってしまえば、クラシック音楽的環境では遅れをとっている国々――の民族の音楽などを取り入れて作品を作り上げる「国民楽派」と呼ばれる作曲家たちへの興味が盛り上がってきたのです。ドイツにとっては、チェコやバルカン半島、ロシア圏の国々がそれらにあたりましたし、フランスにとっての「周辺のちょっと未開の国」はスペイン・ポルトガルだったのです。フランスで、スペイン音楽ブームが起こったのも、時代の流れでした。

   アルベニスも、若いころは「放浪のピアニスト」として、欧州を中心に世界各地を回りましたが、23歳ごろから母国スペインで再び学び、新しいスペイン音楽を作ることに目覚めます。

   そして彼は、8曲からなる「スペインの歌」を構想し、作曲し始めます。

   その1曲目が、もともと「前奏曲」と名付けられ、後に複雑な経緯を経て、有名曲「アストゥリアス」となった今日の1曲です。

   すなわち、彼が最初に構想した「スペインの歌」Op.232は、8曲中3曲しか完成しない状態で、スペインの出版社によって1892年に出版されます。そこに6年後、2曲付け加えて「スペインの歌」は5曲となります。

   他方、アルベニスは、スペインの地方の名前を各曲につけたその名も「スペイン組曲」というシリーズを構想しました。これも8曲が想定されていましたが、最初に発表された曲は第1、2、3、7曲目の合計4曲でした。

本田聖嗣プロフィール

私立麻布中学・高校卒業後、東京藝術大学器楽科ピアノ専攻を卒業。在学中にパリ国立高等音楽院ピアノ科に合格、ピアノ科・室内楽科の両方でピルミ エ・ プリを受賞して卒業し、フランス高等音楽家資格を取得。仏・伊などの数々の国際ピアノコンクールにおいて幾多の賞を受賞し、フランス及び東京を中心にソ ロ・室内楽の両面で活動を開始する。オクタヴィアレコードより発売した2枚目CDは「レコード芸術」誌にて準特選盤を獲得。演奏活動以外でも、ドラ マ・映画などの音楽の作曲・演奏を担当したり、NHK-FM「リサイタル・ノヴァ」や、インターネットクラシックラジオ「OTTAVA」のプレゼンターを 務めるほか、テレビにも多数出演している。日本演奏連盟会員。

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