2019年 11月 22日 (金)

晩年のモーツァルトの傑作室内楽 「クラリネット五重奏 イ長調」

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   先週(9月13日)は、フランス近代の作曲家、ミヨーの管楽器による室内楽をとりあげましたが、今週は古典派の名曲、モーツァルトの「クラリネット五重奏 イ長調 K.581」を取り上げましょう。

モーツァルトの時代に存在したといわれるバセット・クラリネット(当時はバス・クラリネットと呼ばれていたらしいが現代のバス・クラリネットと区別するためにバセット、と呼ばれている)の復元楽器。先端が曲がっていて普通のクラリネットに比べても抜けが悪そうで、あまり音が出るように見えない
モーツァルトの時代に存在したといわれるバセット・クラリネット(当時はバス・クラリネットと呼ばれていたらしいが現代のバス・クラリネットと区別するためにバセット、と呼ばれている)の復元楽器。先端が曲がっていて普通のクラリネットに比べても抜けが悪そうで、あまり音が出るように見えない

18世紀初頭に発明された新しい管楽器

   モーツァルトがこの曲を書いたのは1789年、つまりモーツァルトも訪れたフランスではバスチーユ監獄が襲撃されて、革命の火ぶたが切って落とされていました。若いころはフランスやイタリアや遠く英国まで訪れて音楽の腕を磨き、見聞を広めたモーツァルトでしたが、33歳のモーツァルトは故郷ザルツブルグを離れて、音楽の都、ウィーンで活躍していました。故郷では自分の実力が認められないと感じ、20代半ばでウィーンに出てもう8年近く、その間にモーツァルトの作品は随分と評判になりましたが、このころは少し人気が下降気味、しかし、ウィーンでの豪奢な生活に慣れたモーツァルト一家は、経済的に苦境に陥っていたのです。

   しかし、そんな中でもモーツァルトの才能はますます磨かれていきました。若干35歳で亡くなった彼にとって、33歳はもう「円熟期」で、長年の蓄積に磨かれた彼の作曲技法はますます冴えを見せ、あとからあとから湧いてくる楽想を次々と傑作にまとめ上げるのです。

   このころ、フランスのシャリュモーという楽器を原型とし、18世紀初頭に発明された新しい管楽器が普及し始めます。高音のトランペットの音に似ている音を出すというところから、小さなトランペットの意味である「クラリーノ」の名にあやかって「クラリネット」と呼ばれるようになりました。

   現代のオーケストラではソプラノ・クラリネットとして、B♭管と、A管が主に使われていますが、まだまだ開発の初期段階であった当時は、制作の試行錯誤が続いており、それより少し下の音域を出すことのできる、「バセット・クラリネット」という楽器が存在しました。現代のバス・クラリネットとは違い、もう少し上の音域を担当するように考えられたのですが、音があまりよく出なかったためか、この楽器は廃れてしまい、残っていません。

本田聖嗣プロフィール
私立麻布中学・高校卒業後、東京藝術大学器楽科ピアノ専攻を卒業。在学中にパリ国立高等音楽院ピアノ科に合格、ピアノ科・室内楽科の両方でピルミ エ・ プリを受賞して卒業し、フランス高等音楽家資格を取得。仏・伊などの数々の国際ピアノコンクールにおいて幾多の賞を受賞し、フランス及び東京を中心にソ ロ・室内楽の両面で活動を開始する。オクタヴィアレコードより発売した2枚目CDは「レコード芸術」誌にて準特選盤を獲得。演奏活動以外でも、ドラ マ・映画などの音楽の作曲・演奏を担当したり、NHK-FM「リサイタル・ノヴァ」や、インターネットクラシックラジオ「OTTAVA」のプレゼンターを 務めるほか、テレビにも多数出演している。日本演奏連盟会員。

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