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スポーツに生きる女性たちをもっと理解するために

   2018年10月21日に宗像・福津(福岡県)で開催された「第4回全日本実業団女子駅伝予選会 プリンセス駅伝」で、中継地点の直前に選手が走行中に骨折し、その後両手両足をつきながら進んだ末に襷(たすき)をつなぐというアクシデントがあった。同大会ではほかにも脱水症状のために蛇行や逆走する選手があらわれるなど、女性ならではのトラブルにコーチングが追いついていない状況が指摘されている。今回はスポーツに生きる女性たちの活躍やその内情について書かれた3冊をご紹介。

   J-CASTニュースの書籍サイト「BOOKウォッチ(http://books.j-cast.com/)」でも特集記事を公開中。

健康な女性アスリートを育てるために知っておきたい40のこと

   「日本のスポーツ指導は、男性アスリートを育てる中で構築された方法論にもとづいています。それがそのまま女性アスリートの指導に用いられるため、女性特有の生理現象を考慮しているとは言いがたいのが実情です。女性アスリートが強くなる、能力を十分に発揮するためには女性として健康な体であることが欠かせないのです(本書より)」。

   『女性アスリートの教科書』(著者:須永美歌子 主婦の友社 1728円)はスポーツのしすぎによる無月経や貧血エネルギー不足、将来の骨粗しょう症などの身体的トラブルを防ぎ、運動パフォーマンスを上げるためのトレーニング方法や栄養、月経コントロールなどの知識を図解でわかりやすく解説している。

   「女性アスリートは男性とどう違うの? 」「女性アスリートの月経トラブル・月経ストレス」 「女性アスリートをのばすトレーニング方法」など全5章。

   スピードスケート選手の高木美帆さん、元新体操選手の村田由香里さんらのインタビュー記事にも注目したい。

部員ゼロから20年かけて日本一になった育成メソッド

   "20年前、部員ゼロからはじまった女子高サッカーチームが日本一に輝いた―"。『強く、しなやかな女性を育てる 学園型地域総合スポーツクラブ十文字女子サッカーの挑戦』(著者:石山隆之 徳間書店 1512円)では、十文字学園女子大学カレッジスポーツセンター准教授で、十文字フットボールクラブの総監督である石山隆之氏による、選手育成のノウハウが紹介されている。

   同好会からスタートした十文字高校サッカー部が日本一に至るまでの笑いあり涙ありのストーリーをはじめ、著者が培ってきた育成や教育のメソッドをわかりやすく解説している。

   「強化論―部員ゼロから日本一に(ボール一つないところからのスタート;勝利至上主義で見失った大切なこと ほか)」「地域論―十文字スポーツクラブができるまで(超少子高齢時代を乗り切るために;地域社会から必要とされる存在になる ほか)」「教育論―社会で活躍する女性を育てる(十文字が目指す"学園型地域総合スポーツクラブ";部活動のメリット・デメリット ほか)」「未来論―カレッジスポーツの可能性(なぜアメリカの女子サッカーは世界一なのか;アメリカの女子サッカーの裾野の広さ ほか)」。

   スポーツ関係者のみならず、女性が働く職場の教育者、チームリーダー、経営者にとっても有益な一冊といえそうだ。

スポーツとジェンダー学の全体像が理解できる入門書

   スポーツにおけるさまざまな性に関わる人権問題を取り上げ、ジェンダーの視点から、最新の情報を元に現在の状況をわかりやすく解説する『よくわかるスポーツとジェンダー』(編集:飯田貴子、熊安貴美江、來田享子 ミネルヴァ書房 2,700円)。競技スポーツにおける男性と女性の構築、一流と二流の差異化、性的マイノリティーの排除などを取り上げ、スポーツが性別二元制といった固定的な価値観から解放していく道筋を探る。

   「スポーツにおける両性の平等と公正とは」「教育とジェンダー/教える、学ぶ、自分らしく生きる ほか」「メディアとジェンダー/創られるイメージ、読み解く力 ほか」「スポーツ倫理とジェンダー/暴力、ドーピング ほか」「スポーツイベントとジェンダー/オリンピックとジェンダー、ソチ冬季大会の同性愛問題 ほか」など初心者でもわかりやすい内容。