2019年 11月 19日 (火)

経済理論と現実経済を架橋する

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■『実験マクロ経済学』(川越敏司、小川一仁、佐々木俊一郎著 東洋経済新報社)

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   『実験マクロ経済学』(2014年)は、我が国の実験経済学者の手によってまとめられた、実験経済学、なかでもマクロ経済学上の仮説を検証するために実験を用いた実例を編んだ教科書である。本書は、マクロ経済学の主だった仮説の概説から書き起こし、実験を通じたそれら仮説の検証へと話を進めている。マクロ経済学の入門、あるいは、既修者の復習用としても用いることのできるよう工夫されている。

実験を通じてマクロ経済学の仮説を検証する

   様々な仮説がマクロ経済学では提唱されている。本書で俎上に乗せられているものから抜粋すると、ライフサイクル仮説(消費)、リカードの中立命題(財政政策)、裁量的政策とルールに基づく政策の優劣(金融政策)、購買力平価説(国際経済学)などについては、経済学履修者でなくとも、多くの方が耳にしたことがあるだろう。これら仮説を検証したければ、計量経済学の手法を用いて実証するのが習いであった。実際の経済の振る舞いを記述した経済統計を用いて、その妥当性を検証するのである。十分なデータを得るため、時系列、あるいは諸外国のデータを参照して分析がおこなわれる。このような実際の経済の振る舞いから、仮説が妥当なものとされることがあれば、疑義が呈される場合もある。疑義が呈されても落胆することはない。それもひとつの発見として、新たな理論発展への契機として用いていくのである。

   このような実証分析を補完する手法として、実験室で仮説に準じた設定をつくり、所要のインセンティブ(典型的には金銭による報酬)を与えた被験者の振る舞いを観察することで、仮説の検証をおこなうのが、実験(マクロ)経済学である。ライフサイクル仮説によるならば、ボーナスや遺産相続などの追加的所得は、支給の方法如何を問わず、ごくわずかだけ消費を増やすことになるはずである。しかしながら、実験室での質問を通じて、この仮説が妥当しないことが明らかにされる。本書は、この不整合を説明するために提唱されている「行動ライフサイクル仮説」にまで筆を進めている。実証分析でおこなわれていた、仮説の検証からその見直しという一連の過程を、実験を通じても、おこなうことができる次第である。

【霞ヶ関官僚が読む本】現役の霞ヶ関官僚幹部らが交代で「本や資料をどう読むか」「読書を仕事にどう生かすのか」などを綴るひと味変わった書評コラムです。
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