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北京で広がる「漢服」ブーム 「映え」もバッチリ!若い女性に人気

   中国・北京の街なかで最近、「漢服」を着ている若い女性たちをよく見かける。地下鉄でもショッピングモールでも、故宮など観光地でも......。漢服を日常使いする中国の若者が急増しているという。「コスプレ感覚なのかな?」と不思議に感じた日本人記者が、中国人記者と一緒に、先ごろ開かれた漢服イベントを取材して、流行の背景を追った。

   日本人がまず思い浮かべる中国の民族衣装は、深いスリットの入った「チャイナドレス」かも。実はこれは清朝(17~20世紀)を統治した満州族の民族衣装だ。中国の人口の9割以上を占める漢民族の伝統的な民族衣装こそが「漢服」。一口に「漢服」と言ってもそのデザインは時代によってさまざまだ。

  • 漢服イベント会場の若者たち
    漢服イベント会場の若者たち
  • 漢服イベント会場の若者たち
  • 明の時代の漢服を着こなす心頭さん
  • 漢服イベント会場の若者たち
  • 漢服イベント会場の若者たち
  • 時代による漢服の変化(左端はチャイナドレス)

古典舞踊の世界きっかけに......

   2019年9月中旬に開かれたイベントの会場に着くと、北京にこんなにも漢服を持っている人、漢服を好きな人がいたの!?と、びっくり。「好きな理由」を参加者たちにさっそく聞いて回った。多かったのは、もともと中国の歴史や文化に興味があり、その延長で漢服を好きになったという答えだった。

   高級感漂う絹製の漢服がひときわ目立っていたのが心頭さん。細かな刺繍が目を引く漢服は明朝(14~17世紀)のものという。ちなみに、上品な感じが特徴の明朝の漢服は日本人向きかも。

「学生時代、舞踊を専攻していて。古典舞踊は踊るときは漢服を着るので、自然と好きになりました」

   漢服にはまって3年の心頭さんは、現在舞踊教室を主宰して、中国の古典舞踊を教えている。教室ではもちろん、買い物や旅行などでも漢服を着ているとか。その写真や動画をSNSにアップして、漢服の魅力をアピールしている。

「今日は明朝の詰め襟と比甲(ノースリーブの長衣)を着ています。漢服の値段はピンからキリまでですが、明朝のものの値段は他の時代より少し高くて、華やかなものは1万元(約15万円)以上します。私は月2~3着購入していますが、500元(約7500円)ほどの手ごろな値段のものもありますよ」

観光スポットで撮影すれば15万円以上

   中国中央テレビ(CCTV)経済チャンネルの調査では、中国の漢服産業の規模は現在約10億9000万元(約163億5000万円)で、漢服と一緒に身に着けるかんざし、靴、かばんといった装飾品など関連市場も拡大している。今回のイベント会場で出会ったかわいい漢服を着ていた女の子のお母さんは、漢服を撮影する仕事をしているそうだ。こうした写真撮影も関連市場のひとつ。

   北京市朝陽区の大手漢服写真館「盤子女子坊」(http://www.panzi.cc/index.html)は中国国内でいま40店余りを展開しているという。最も一般的な5種類の漢服を着て30枚の写真を撮るコースなら約1200元(約18000円)という。もし故宮など屋外の観光スポットで撮る場合は1万元(約15万円)以上かかるようだ。

   10代~20代の若い女性を中心として盛り上がっている「漢服」文化。「はじめは面白いかなと思って着てみたけど、実際に着てみると昔の人たちはこういうのを着て生活していたのかと実感でき、歴史が身近に感じられる」と、漢服を着る楽しさを話す女性もいた。今回の漢服イベントを主催した虎斑さんは、「中国が世界的な力を持つにつれ、私たちの自信も高まり、過去の栄光と文明を取り戻そうという動きが出てきました。漢服と伝統文化の復興は一つの大きな流れであり、必然的な動きなのです」と語った。

   イベントを取材してみて、「伝統文化復興」の盛りあがりを感じると同時に、中国の若者が、趣味やエンターテインメントに惜しみなくお金を費やしてきている要因も大きいように感じた。漢服ブームは、これから一層盛りあがりそうだ。

(文=中嶋優奈、王朝陽 写真=中嶋優奈、郭然)

■漢服が買える店は、「重回漢唐」(https://chonghuihantang.tmall.com/)、「青錦漢服」(北京市東城区汪芝麻胡同43-1)、「如夢霓裳」(北京市朝陽区8号soho尚都北塔4階北区2471号)など。