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「宗教儀礼に囚われない」新たな供養スタイル 読経・焼香のない葬式、自宅に置ける骨壺

   もうすぐ春のお彼岸だ。3月20日「春分の日」を中日として前後3日、計7日の間に墓参りをしたり、仏壇や仏具を清めたりして、先祖や家族に思いを馳せる時期となる。

   近年は供養の仕方が多様化し、故人や遺族の思い、立場、予算などに応じてより良い選択肢を取れるようになっている。例えば、従来の宗教儀式に囚われずに故人を送り出せる「想送式(そうそうしき)」は新しい手法の一つだ。

  • NINE&PARTNERSが提案する「想送式」
    NINE&PARTNERSが提案する「想送式」
  • NINE&PARTNERSが提案する「想送式」
  • 「想送証明書」にサインし「みんなで故人を送り出した」という証を作る
  • リビングに馴染むデザインが特徴の仏壇「LIVE-ing」コレクション
  • ミニ骨壷「ZAYU」

特定宗教の信仰がないのに僧侶を呼ぶ「矛盾」

   「想送式」はポータルサイト「お坊さんのいないお葬式」管理・運営にあたる葬儀社・NINE&PARTNERS(愛知県名古屋市)が提案する葬儀形態。遺族や参列者が故人との最後の時間を大切に過ごせるよう、葬儀内容を自由にプロデュースできるのが特徴だ。例えば読経や焼香ではなく、参列者の代表数人が「想送証明書」にサインして「みんなで故人を送り出した」という証を作る「想送の儀」や、故人にまつわる思い出の写真データをもとにした「メモリアルムービー」上映を行う。

   NINE&PARTNERSがサービス提供に至った背景には、葬儀にまつわる"ある矛盾"がある。全国の30代~70代男女を対象に同社が実施した「お葬式に関する調査」で、仏教やキリスト教など「特定の宗教を信仰し、日ごろ宗教活動をしていない人」が90.3%を占めたにもかかわらず、51.4%が「仏式葬儀の喪主またはその配偶者・子女という立場でお坊さんを呼んだお葬式に携わった経験がある」という回答結果になった。そこで宗教観のない人向けに、故人らしさを自由に演出できる葬儀の選択肢としてサービスを生み出した、と発表資料で説明している。

リビングに違和感なく溶け込める仏壇、骨壺

   「仏間」に置かれることが一般的な仏壇も、時代に即して変化を遂げている。仏壇・仏具大手のはせがわ(福岡市)が国内の家具メーカー「カリモク」や「飛彈産業」などと共同開発した「LIVE-ing」コレクションには、家具としてリビングに馴染むデザインが特徴の仏壇が揃う。はせがわは同コレクションを通じ、「従来の常識にとらわれず、新しいお祀りの仕方や、インテリアとのコーディネートを提案する」ことを目指している。

   高齢化や核家族が進む昨今、定期的に墓参りに行くのが体力、時間・距離を考えると難しい人にとっては、ミニ骨壷「ZAYU」が受け入れやすいかもしれない。ネットメディアの企画・運営会社キリフダ(東京都港区)が提案する新しい供養スタイルだ。富山県高岡市で400年の歴史を持つ「高岡銅器」の技法と、木工、漆工などの技術を組み合わせて製造した、工芸品のような佇まいの小さな骨壺で、リビングにも違和感なく置ける。

   従来の慣習や枠組みに囚われず、自由な発想で故人を送り出し、偲ぶことができる現代。墓前や仏壇前で手を合わせ、自分や家族にとって最適な供養の形を再考するのもよさそうだ。