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コロナ禍で仕事ゼロ「どん底」味わった俳優にインタビュー 仕事続けるために必要なのは熱意と「抜け道」

   コロナ禍で、予定していた撮影や舞台が軒並み延期・中止になり、俳優たちが活躍の場を大幅に奪われている。そうしたなか「今だからできること」を追求し、映画作りに励む俳優たちがいる。

   「精子バンク」をテーマに、3人の女性が会話劇を繰り広げる映画「truth~姦しき弔いの果て~」は、俳優の広山詞葉さんが発起人となり、わずか2か月余りで制作した。J-CASTトレンドは、広山さんほか、同作に出演する声優・福宮あやのさん、俳優・河野知美さんに取材し、コロナ禍における現況と、今後「俳優業を続けるうえで重要だと思うこと」を語ってもらった。

  • (左から)俳優の河野知美さん、広山詞葉さん、声優の福宮あやのさん(c)映画「truth~姦しき弔いの果て~」パートナーズ/写真・ハラダケイコ
    (左から)俳優の河野知美さん、広山詞葉さん、声優の福宮あやのさん(c)映画「truth~姦しき弔いの果て~」パートナーズ/写真・ハラダケイコ
  • (左から)俳優の河野知美さん、広山詞葉さん、声優の福宮あやのさん(c)映画「truth~姦しき弔いの果て~」パートナーズ/写真・ハラダケイコ
  • 「truth」制作プロジェクト発起人の広山さん(c)映画「truth~姦しき弔いの果て~」パートナーズ/写真・ハラダケイコ
  • どん詰まったときに「思い切ってやる力」が重要だと話す福宮さん(c)映画「truth~姦しき弔いの果て~」パートナーズ/写真・ハラダケイコ
  • 河野さんは2020年は「これまでの経験が糧になり、どん底期はなかった」と語る(c)映画「truth~姦しき弔いの果て~」パートナーズ/写真・ハラダケイコ

撮影ストップ、舞台中止で「仕事ゼロ」に

――2020年は誰にとっても大変な一年でした。「どん底」だったのはいつですか。

広山:明確に覚えているのですが、私は4月2日です。各テレビ局での全撮影がストップしてしまい、主演舞台も中止になり...仕事がゼロになりました。特に舞台は、中止にするか否かの話し合いが本当につらかったです。当時はまだ「新型コロナウイルス」についてわからないことが多かったので、「やりたいけど、もしも感染者を出して誰かを苦しめてしまったらどうしよう」と。色々な気持ちがせめぎ合いました。
福宮:私は一年を通じて、ほぼどん底でした。普段は声優として活動しており、3月、4月頃はリモートでの仕事になるかもということで、自宅にスタジオを作るので気が紛れていました。ただ、「team.鴨福」という団体の主宰として、毎年行っている朗読劇の公演が5月に中止が決まったり、子どもや夫が毎日家にいることで家事・育児に疲れてしまったりと、特に7、8月頃が厳しかったですね。「仕事も育児も妥協せず頑張っている人もいるのにな」と他人と自分を比べて落ち込んでしまうこともありました。
河野:私は「どん底」はなかったと感じています。さまざまな行動制限がかかった一年でしたが、「あ、そうなんだね。じゃあ今はこういうことができるね」と受け止め、オンラインで学校に通ったり、家を買ったりしました。これまで生きてきたなかで、自分の大事なもの、向き合いたいことがぼやけてしまっていたのですが、コロナ禍であらゆる事柄が自分の中でふるいにかけられ、改めて「私は映画が好き」だとわかったんです。こう言っては誤解があるかもしれませんが、「すごくありがたかった」。
広山:確かに、自分にとって「大切なもの」への理解が深まったよね。

「俳優一本」よりも「抜け道」を用意して生きる

――今後「俳優」を続けるうえで大事だと思うことは。

河野:これからの時代は俳優業だけに全てを捧げるより、生きるうえで色々な「抜け道」を柔軟に用意することも重要だと思います。副業もその一つです。私は派遣社員としても働いていますし、俳優同士の英語勉強会の主催もしています。
福宮:確かに「俳優だけを極められる人」は羨ましいよね。すごく尊敬する。
私も今、自分が声優として活動するだけでなく、新たに声優を目指す人向けのオンラインレッスンで講師をしています。自分より優れている人、もっと上手に教えられる人はたくさんいると思いますが、そこで尻込みしていたらもったいない。「これが自分だから仕方ないか」と受け止めて、今できる精一杯を何でもやればいいと思っています。どん詰まったときに「思い切ってやる力」は今後も必要になるのでは。
広山:私も外出自粛の間に、オンラインでヨガインストラクターの資格を取りました。役に立つかなと思って。
福宮:何かあったとき、「転んでもただでは起きない力」は大事だよね。
広山:極端な話になるかもしれませんが、やりたいことへの意欲があって、インターネットに接続するための携帯代が払えれば、ひとまず「表現する場」は得られる時代だと思います。私は「リモート女子ドラマ」という、緊急事態宣言中の女4人による映像作品を制作してYouTubeで公開したり、このまま2020年が終わってしまうのは嫌だと思い立って福宮さん、河野さんに「映画を作ろう」と声をかけたりしました。演じることへの意欲と、生きる力を試されているのかなと思った一年でした。
河野:やり方次第だよね。状況に対して、自分の形を変えて順応していくというか。
広山:そうだね。「何かしたい」と思うだけ、周りに期待するだけではなく、自分から行動に移すのが大切。次の仕事や新たな人脈が得られたり、色々な「カッコイイ大人」が手を差し伸べてくれたりして、道が拓けるなと思います。

後編では広山さん、福宮さん、河野さんに「truth」の見どころや制作秘話を聞く。


○プロフィール
河野知美(こうの・ともみ)
迫田公介監督作品『父の愛人』でビバリーフィルムフェスティバル(USA)でベストアクトレス賞受賞。NHK大河ドラマ『西郷どん』や高橋洋監督作品『霊的ボリシェヴィキ』、三宅唱監督作品『呪怨:呪いの家』などに出演。

広山詞葉(ひろやま・ことは)
映画「ファーストラヴ」、ドラマ「最後から二番目の恋」「軍師官兵衛」、舞台「後家安とその妹」など出演。プロデュース作「今夜新宿で、彼女は、」では数多くの女優賞作品賞を受賞。主演映画「ひとつぼっち」本年公開。

福宮あやの(ふくみや・あやの)
2011年声優としてデビュー以降『Marriage Story』、『グッド・ファイト』など多くの作品に出演。2014年にはteam.鴨福を立ち上げ、主宰として毎年朗読劇公演を行っている他、司会やナレーターとしても活躍している。