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「ワクチン接種済バッジ」つくった善意 高齢者が安心して病院に行けるように

「新型コロナワクチン接種済」

   そう書かれた缶バッジが売られている。杉本印刷(長野県飯田市)が2021年5月11日に発表した、オリジナル商品だ。J-CASTトレンドは、同社の杉本慈子社長に販売経緯と目的を取材した。

  • 「新型コロナワクチン接種済」バッジ(画像は杉本印刷提供)
    「新型コロナワクチン接種済」バッジ(画像は杉本印刷提供)
  • 「新型コロナワクチン接種済」バッジ(画像は杉本印刷提供)

「自分がコロナだと思われていたらつらい」

   販売目的は、ずばり新型コロナウイルス感染者と勘違いされるのを防ぐためだ。同社では新型コロナが流行し始めた2020年から「花粉症です」、「喘息(ぜんそく)です」など、マスク着用や体調不良の理由を示した文字入りバッジを販売していた。

   これは杉本社長が、ぜんそくなどの持病を持つ高齢者が病院へ行った際、「自分がコロナだと思われていたらつらい。バッジを作ってほしい」と相談されたことがきっかけ。困っている人のニーズに応えようと、始めた。

   今回の「接種済み」バッジもその発想に基づき、社員が製作を提案した。もちろん接種済の人が対象だ。「付けている人も、バッジを見た人も、お互いが安心できるように」と考えた。

   もうひとつ理由がある。現在一部の国では、ワクチンを接種した人に接種の証明書として「ワクチンパスポート」を発行している。しかし、まだ日本では進んでいない。

「証明書の代わりに使っていただければ、という思いもあります」

医療機関を中心に展開

   善意から生まれた缶バッジだが、接種していない人がこのバッジを付けて外出する「悪意」も考えられる。ただ、ワクチン接種は国内ではまだまだ進んでいない。日本経済新聞のデータを見ると、2021年5月17日現在で少なくとも1回接種した人は、医療従事者では対象者480万人の75%だが、高齢者は対象者3549万人の3.2%だ。それ以外の人はまだ行われていない。

   杉本印刷が本社を置く長野県でも、状況は同じだ。それでも杉本社長は、バッジの販売に「はっきり言って不安はありました」。

   悪用に対する懸念があったため、まずは病院などの医療機関を中心に展開していきたい、と現在慎重に準備を進めているところだという。

「ワクチンを打った病院に置いてあれば、そこで接種された方が購入して帰れるのでは、と考えています。また、医療機関側も、ワクチン接種の証明代わりに使っていただけたら」

   同商品は大々的に販売はしていないものの、電話やメール、FAXでの注文を受け付けている。デザインは3つ、各3色ずつ計9種。価格は小サイズが1個300円(税込)、大サイズが500円(同)。

   すでにインスタグラムを見た高齢者から注文が入ったという。