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コロナ第4波、小学校でもクラスター 自治体によって「公表」にばらつき

   新型コロナウイルス第4波では子どもたちの感染が増え、小学校や保育所でもクラスターが発生するケースが目立っている。しかしながら、その公表基準にはばらつきがあり、自治体による「公表格差」が際立っている

  • 小学校や保育所でもクラスターが発生するケースが(写真と本文は関係ありません)
    小学校や保育所でもクラスターが発生するケースが(写真と本文は関係ありません)
  • 小学校や保育所でもクラスターが発生するケースが(写真と本文は関係ありません)

学校名も報道

   札幌市では2021年5月20日、394人の感染者が出た。クラスターは4件。その一つは小学校で9人が感染した。この学校を含めて小学校3校、中学校5校で感染者が出て学級閉鎖などになった。札幌の新聞やテレビでは、公的情報をもとに、これらの小中学校の名前も報じている。

   しかしながら、こうした札幌市のようなケースは全国的にみると少数派のようだ。東京23区内の自治体のウェブサイトを見ても、実態がわかりにくい区が多い。

   例えば新宿区。「令和3年5月 公表情報」というページを見ると、日々の感染情報を知ることが出来る。「公表日」「施設名等」「感染者」「居住地」「感染判明日」「濃厚接触者」「対応」の順で以下のように記されている。小中学校についてはこんな感じだ。

○5月17日、区立小学校、児童、区内、5月15日、無、消毒実施済
○5月17日、区立中学校、生徒、区内、5月15日、無、消毒実施済

   順に見ていくと、この日だけで、小学校2校、中学校1校、保育施設一か所で感染者が出ていことがわかる。保育施設では、接触した可能性のある児童及び職員にPCR検査を実施したことが記載されている。10日には、保育施設で7人の児童が感染、園児の受け入れ態勢が整うまで休園したことも出ている。この施設でクラスターが発生したようだと推測できるが、それ以上のことはわからない。

「公表基準」に従って公表

   新宿区は、区内人口約35万人に対し、累計のコロナ感染者は8400人を超える。東京新聞の「23区の累計感染者数と人口比率」によると、人口10万人当たりの感染者数は2400人を超えている。概算で40人に1人という高率だ。東京では断トツ、全国でもトップクラスのコロナ多発区となっている。

   区は、「新宿区における新型コロナウイルス感染症に係る公表基準」に基づいて情報を公開している。「区有施設利用者(職員等含む)が感染した場合」「区内で感染が確認され、その感染に起因して、感染拡大の恐れがある場合」、プライバシーへの十分な配慮を行ったうえで、公表を行う、としている。感染防止のため、一定の情報公開を心掛けていることはうかがえるが、保護者の中には物足りなさを感じる人がいるかもしれない。

   より詳しい公表を続けている自治体もある。例えば埼玉県新座市。「市立小・中学校における新型コロナウイルス感染状況」を公表している。こちらも新宿区と同じく、学校名は匿名だが、対応部分が詳しい。

   「当該小学校は、5月17日、18日を臨時休業とします。学校の対応については、当該校から保護者に連絡済みです」、「保健所の助言を踏まえ、学校内で感染が広がっている可能性が極めて低いと判断されたため、臨時休業は実施しません」などと記されている。

濃厚接触情報も掲載

   大阪府寝屋川市はさらに進んでいる。ウェブサイトには市立の小中学校、保育所の名前が固有名詞で並んでいる。それぞれをクリックすると最新情報がわかるシステムだ。

   例えば「市立第五小学校(5月19日更新)」をクリックすると、「市民及び保護者の皆様」への告知が掲載されている。

   「寝屋川市立第五小学校の児童2人(同居)の関係者に新型コロナウイルス感染症の感染が確認されたことから、当該児童らが濃厚接触者として検査を受けることになった」「結果が判明するまでの間(1日~2日程度)、当該児童らが在籍するクラスを『学級休業』とします。なお、当該児童らは留守家庭児童会に入会していないことから、留守家庭児童会は『通常運営』とします」。

   さらに「検査結果が分かり次第、メールでお知らせします」「当該児童の『陰性』が確認された場合は、市保健所と協議の上、通常登校(選択登校制)とします。なお、当該児童は2週間の自宅待機となります」「『陽性』が確認された場合は、当該児童が在籍するクラスの児童全員及び担任、さらに市保健所が濃厚接触者として判断した学校関係者のPCR検査を実施し、検査結果に関わらず2週間の自宅待機をお願いします。(自宅待機中は、教員による授業のライブ配信が行われます。)」「学級休業以外のクラスにつきましては、市保健所と協議の上、感染予防対策を強化した上で、通常登校(選択登校制)となります。」「詳細につきましては、学校から第五小学校の保護者の皆様に連絡があります」と実に細かい。

   「更新日」が新しいところは、最近何らかの動きがあった学校だ。逆にしばらく更新されてない学校は、感染が起きてないことがわかる。

変異株は全ての年齢層で感染しやすい

   西日本新聞は4月25日、「第4波は子どもにも猛威 変異株疑い割合高く学校警戒」という記事を公開している。

   その記事では、ゲノム解析による4月19日時点の全国の変異株確定感染者を年代別にみると、10歳未満は7・5%(従来株2・9%)、10代は11・1%(同6・7%)。福岡県内も同様の傾向で、今月11日までの変異株感染疑いのうち、10歳未満は5・2%(同2・9%)、10代は13・3%(同7・2%)というデータが出ていた。

   「変異株は全ての年齢層で感染しやすく、(行動範囲が狭いため)感染の広がりの最後に位置していた子どもにまで及ぶようになっている」という長崎大の森内浩幸教授(小児感染症)の分析も紹介されていた。

   コロナ第4波は東京や大阪以外の大都市や周辺部でも感染者が増えている。自治体によるコロナ情報の格差は以前から指摘されているが、変異株は学童など低年齢層にも感染しやすいとされているだけに、保護者にとっては心配だ。感染情報の発信については、従来以上のきめ細かさがのぞまれる状況となっている。