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木下富美子都議は居座り続ける 除名やリコールできない仕組みの謎

   木下富美子都議=元都民ファーストの会、板橋区選挙区、現在は1人会派=がいっこうに辞任する気配がない。2021年7月の東京都議選の期間中に無免許運転で人身事故を起こしたとして書類送検され、都議会から2度の辞職勧告決議を受けた。

   一般会社員だと、懲戒免職にもなりかねないが、なぜ木下都議は居座り続けることが可能なのか。

  • 都議会は辞職勧告を2度決議したが、これを「無視」
    都議会は辞職勧告を2度決議したが、これを「無視」
  • 都議会は辞職勧告を2度決議したが、これを「無視」

辞職勧告には法的拘束力ない

   木下都議は、都議選では再選されたが、その後、交通事故が発覚。所属していた都民ファーストの会を除名された。今は一人会派を立ち上げ、そこに所属している。長く体調不良を理由に都議会の全ての会議を欠席していたが、11月9日、約4か月ぶりに公の場に姿を見せ記者会見に応じた。

   各紙の報道によると、木下都議は「多くの皆さまにご迷惑をかけた。免許は再取得せず、運転はしない」と陳謝したが、進退について「辞職を求める声があるのは承知している」とした上で、「批判を受ける一方で続けてほしいという声があるのも事実」と、議員を続ける考えを示した。

   会見は9分ほどで切り上げ、その後、都議会の要請に応じて三宅茂樹議長らと面会。三宅氏は「辞職するべきだ」と求めたが、辞職勧告には法的拘束力がないこともあり、木下氏は応じなかったという。

   木下都議に、議員報酬と政務活動費で月額132万円が満額支給されていることに対しては批判が出ていたが、この日の記者会見で、すでに振り込まれた3か月分の議員報酬計約192万円をNPO法人などに寄付したことや、政務活動費計150万円は請求しない考えを明らかにした。

「議会内の問題行為」「禁固以上」でないから...

   一般の会社員では考えられないような木下都議のふるまい――その理由については東京新聞が詳しい。

   同紙によると、地方自治法では議員の身分を失わせる「除名」の懲罰を定めている。ただ議会内での問題行為が対象のため、今回は当てはまらない。有権者が議員個人の解職を求める「リコール」も、当選から1年間は行使できないと規定されている。

   木下議員は9月中旬、自動車運転処罰法違反容疑などで書類送検されたが、禁錮以上の刑に処せられた場合などに被選挙権を失うと定める公職選挙法の規定にも現状では該当しない。

   ただし、議会を長期欠席した場合に、議員報酬を減らすルールがある地方議会は珍しくない。富山や群馬など少なくとも8県で規定があるほか、東京23区でも港や台東、品川などの各区が条例で定めている。

   こうした事情を背景に都民ファーストの会は9月末、「公務に携わっていないのに報酬を満額受け取ることはあってはならない」として、長期欠席した議員の報酬を半減する条例改正案を、立憲民主党などと共同で他会派に提示。他県の事例を参考に、病気などで連続する2回の定例会と、その間の会議を全て休んだ場合に適用するとしたが、都議会の足並みはそろわず、定例会で議論はまとまらなかったという。