私の中の“プロの芸術家”像が少し変わった

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   日本庭園は、最も自然に近い芸術品だ。京都・龍安寺で、その庭の“作りすぎない美しさ”に目を奪われ、身動きが取れなくなったこともある。

   今回の『プロフェッショナル 仕事の流儀』は、枯山水を得意とする庭師・北山安夫の話。枯山水とは、龍安寺に代表される、石や砂を用いて山水の風景を表現した庭園様式のことだ。北山の代表作とされる京都・建仁寺の「潮音庭」。テレビに映し出されたその庭は、場の空気と見事に調和していて美しかった。

   番組では、彼が作り替えを手がけた群馬の禅寺の庭も紹介された。その庭には様々な植物が共存していて、統一感がない。そこで北山は「桜」を庭園のメインにして、それと調和がとれないものをどんどん切断していった。なかには樹齢100年以上の立派なサルスベリの木もあったが、北山は迷いなく切り落とてしまう。中途半端では、感動は生まれない。それが北山の信念なのだ。

   しかしながら、ただ気の赴くままに木を切っているわけではない。

   「人の感性に訴えかける庭を造るということにおいて、一番大事なことは?」と問われて、こう答えた。「思いやりだと思います。庭には、悲しみを抱いた人、喜びを抱いた人、いろんな人が見に来られる。その全ての人に対して対峙できる庭、安らぎや夢、勇気を与えられる庭を造れたら、最大の喜びです」

   一人よがりで庭を造るのではなく、その庭が置かれるシチュエーションを想像しながら造り上げていく。ビジネスでは当たり前の発想が、日本庭園を造るという芸術的な活動に生かされていることにちょっと驚いた。

   プロの芸術家は自分の才能を信じきり、自分の思うがままに作品を作り上げていく。そういうものだと思っていた。しかし北山は、自分の作品が置かれる環境のことまでしっかりと計算している。一歩下がって、作品のことを考えている。北山が“プロフェッショナル”と呼ばれるゆえんなのだろう。

   私の中で“プロの芸術家”像が少し変わった。

   ※NHK プロフェッショナル 仕事の流儀 「己を出さず、自分を出す~庭師・北山安夫」(2007年2月15日放送)

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