「東京タワー オカンとボクと、時々、オトン」
樹木希林の下手さ加減、セリフも動きもなってない

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   本日4月14日から始まった今年の邦画の話題をさらうであろう「東京タワー」だが、正直言って期待外れだ。笑いながら涙を流し続けて読んだリリー・フランキーの原作が良く出来ているだけに、映像化された画面にまるで馴染めない異質な抵抗を感じる。

(C)2007T-o.b.t.o.F.P..
(C)2007T-o.b.t.o.F.P.

   原作はボクとオカンのリレーションを軸に、オトンの存在とボクの成長、オカンを取り巻く人々を描き、胸を打った。そこを描き切れていない映画にがっかりする。脚本の松尾スズキは自分も劇作家だけに自分色を作りたいのを抑えながらアウトラインを忠実に追っている。だが魂が籠もらないんだな。ストーリーは神聖犯すべからざるものだと頑なになって、肝心のスズキ本人が死んでいる。

   松岡錠司監督も非力。役者の演技の質がバラバラだ。均質にしてハーモニーを取るのが監督の責務だが、果たしていない。樹木希林の下手さ加減にびっくり。TVのパターンにはまった演技は笑わせるが、普通の芝居はセリフや動きもなっていない。「佐賀のがばいばあちゃん」の吉行和子を見習ったら? 主役の放埓な生活を送りながらオカンに愛情を注ぐオダギリジョーは、今までの作品の中で一番良い。二人が噛み合わないのが残念だ。だから泣けない、笑えない。

   若い頃のオカンは、樹木の娘の内田也哉子。実の親子なので、オカンの年令の変化にさほど違和感がない。也哉子の声がときに母親の樹木にそっくり。実母の樹木の芝居を真似しないのが良かったんだな。松たか子も別れてもオカンに尽くす元恋人を好演している。オトンの小林薫はもう少し豪放磊落でいい加減かと思ったら、単なる真面目な爺いになっているので驚いた。

   オカン(内田)は子供のボクを連れて、小倉のオトン(小林)の家を出た。筑豊の実家に戻り、女手一つでボクを育ててくれた。ボクに美味しい糠漬けを食べさせようと、夜中に漬け込んでくれる優しいオカン。長い休みにはオトンの家に行った。なんでも中途半端なオトンは船の模型を作ってもペイント半ばで放り出す。東京の美大を出てもボク(オダギリ)はオカンに甘えていたが、借金返済のためイラストやコラムなどなんでも引き受け、やっと食えるようになった。そして、オカンが癌の手術をしたことで、東京で一緒に暮らし始める。オカンの料理にボクの友人がいつも集まった。だが、オカンは東京タワーの見える病室に入った――

   ユーモアに縁取りされた涙物語だが、肝心なユーモラスなシーンがぎこちない。2時間半になんなんとする長さにも辟易する。アメリカのジョン・カーペンター監督は映画が生理的に快適なのは1時間半から2時間の間だと主張している。

恵介
オススメ度: ★★★☆☆
2007年日本映画、松竹配給、2時間22分、2007年4月14日公開
監督:松岡錠司
出演:オダギリジョー/樹木希林/内田也哉子
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