2024年 4月 20日 (土)

「こわれゆく世界の中で」
J・ロウとビノシュ、「愛の不法侵入」を熱演

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   原題は「BREAKING AND ENTERING」で、他人の住居などに「不法侵入」という意味。無味乾燥な原題になんとも情緒的な邦題をつけたものだ。でも「こわれゆく世界」って何だろう?

(C)The Weinstein Company and Miramax Films. All Rights Reserved.
(C)The Weinstein Company and Miramax Films. All Rights Reserved.

   都市再開発が進められているロンドンのキングス・クロス。がさつで猥雑な地区が近代都市に生まれ変わろうとしている。その開発プロジェクトの責任を担っているのがウィル・フランシス(J・ロウ)とサンディ・ホフマン(M・フリーマン)の経営する会社だ。この地に事務所を開いた二人はオープンハウスのパーティを開き、ウィルの内縁のリヴ(R・W・ペン)とその娘ビーも出席している。リヴとは10年以上も一緒に暮しているが、籍は入っていない。そのせいか彼女の連れ子ビーは精神を病んでいる。

   そのパーティの後、誰もいなくなったオフィスの屋根から一人の少年が忍び込み、ドアを開けて仲間を引き込みOA機器など金になる事務機器を運び去る。警察はこんな場所だからしょうがないと言う態度。そして窃盗事件は再度起こる。ウィルは張り込んで少年を見つけ、跡をつけてアパートを突き止める。日を改めて訪ねると、母親アミラ(J・ビノシュ)が顔を出す。

   監督・脚本のアンソニー・ミンゲラはキングス・クロスに長く住んだ。自分の街を、よそからの様々な移民が蚕食し新たな共同体が出来上がるのを興味深く観察している。イギリス人のジュード・ロウとポーランド系フランス人のジュリエット・ビノシュを使い、キングス・クロスを舞台に自分の気持ちと希望、挫折を描いている。ミンゲラは「愛しい人が眠るまで」など監督作品で成功したが、元々は脚本家で15年振りのオリジナルのストーリーに自分のコンセプトを託す。

   アミラはボスニアからの難民。息子と二人で細々と暮している。ウィルは長年暮しているリヴとビーとの絆が閉塞状態。アミラに傾く自分の気持ちは止まらない。アミラも異郷の中でウィルに愛と安らぎを求めている。純粋に愛を追求することは結果として、ウィルの家族とアミラの家族へ互いに「不法侵入し壊す」こともしているのだ。

   青い目の美男子で演技派のジュード・ロウは「コールド・マウンテン」「リプリー」とミンゲラ作品でアカデミー賞候補になり、監督との信頼関係は厚い。ややくたびれてきたジュリエット・ビノシュもミンゲラの「イングリッシュ・ペイシェント」でアカデミー助演女優賞を貰っている。ミンゲラと長い付き合いのある俳優たちが、監督の求めている「不法侵入」の中で「愛とは何か」「愛の行く末は?」「愛の犠牲は?」を熱演する。

恵介
★★★☆☆
こわれゆく世界の中で(BREAKING AND ENTERING)
2006年イギリス映画・ブエナビスタ配給・1時間59分・2007年4月21日公開
監督・脚本:アンソニー・ミンゲラ
出演:ジュード・ロウ / ジュリエット・ビノシュ / ロビン・ライト・ペン
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