「ドレスデン、運命の日」
空爆下で揺れる女心、巧みに描きだす

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   1945年2月の爆撃によって廃墟と化したドレスデンの聖母教会(フラウエンキルへ)は、2005年10月30日に再建完了され、新しい建物や設備を神聖化するための儀式が行なわれた。そのニュースはまだ耳新しい。


   17~18世紀、ドイツの東、チェコとポーランドの国境近くに位置するドレスデンは「エルベのフィレンツェ」「バロックの真珠」と称えられた都市。美しい建造物と芸術・文化の香り高く、近郊のマイセンの陶磁器で益々栄えた。しかし1945年2月の2日間に亘る英米連合軍の空襲でその美しい街は破壊された。その後、長い年月をかけて歴史的建造物が修復・再建され、2004年にエルベ渓谷は世界文化遺産に登録された。この映画は、戦争で傷ついたドレスデンの惨状と、偶然の出会いから敵国の人間を愛してしまった若い二人の悲劇を描く。

   主人公の看護婦アンナを演ずるのは、TVで活躍してきたフェリシタス・ヴォール。医師でアンナの婚約者、アレクサンダーにはカナダ生まれのベンヤミン・サドラー。アンナと運命の出会いをする英軍パイロットは、ロンドンの舞台で活躍してきたジョン・ライト。アンナの家族に、ハイナー・ラウターバッハ、カタリーナ・マイネッケ、ズザンネ・ボルマンなど。監督は、ドイツで700万人動員の大ヒット映画、ベルリンの壁を抜ける「トンネル」のローランド・ズゾ・リヒター。

   1945年1月、ドイツ東部の都市ドレスデン。24歳のアンナ(ヴォール)は、父親カール(ラウターバッハ)の病院で看護婦をしている。物資は不足。麻酔代わりのモルヒネも尽きるが、恋人の外科部長アレクサンダー(サドラー)を気丈に手伝う。ある日アンナは病院の地下室で、負傷した英軍パイロットのロバート(ライト)が潜んでいるのを見つけ、後日傷の手当てをしてやる。彼がはっきりイギリス人だと分かったときには、既にアンナはロバートに惹かれていた。逃亡兵を匿った女性がゲシュタポに銃殺されショックを受けたアンナは、癒しを求めて深夜ロバートと愛し合う。

   2月12日、アンナの自宅でアレクサンダーとの婚約式が盛大に開かれた。そこにロバートが現れ、カールがモルヒネを溜め込み一家でスイス逃亡を図っている、とアンナに暴く。患者を裏切る行為に反発し、ロバートと逃げようとするアンナ。カールとアレクサンダーは二人を引き裂くが、ドレスデンを攻撃するイギリス軍の編隊が迫っていた。

   心理描写が巧み。アンナはアレクサンダーと恋仲ではあるが、今すぐ結婚したい、というほどではない。しかしドラマティックな求婚には、遂にイエスと答える。憎きイギリス兵ではあるが、優しく包容力のあるロバートにココロがなびいてしまう。父の親心は理解するが、正義感の方が勝る。燃え上がった恋心と共に二人で逃げたい。こういう女心が厳しい戦況を背景に描き出されるが、物語はかなりシビア。空襲を受けたドレスデンの被害状況は悲惨だ。

恵介
ドレスデン、運命の日(DRESDEN)
2006年ドイツ映画・アルバトロス・フィルム配給・2時間30分・2007年4月21日公開
監督:ローランド・ズゾ・リヒター
出演:フェリシタス・ヴォール / ジョン・ライト
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