「恋しくて」
沖縄の高校生バンド、波乱万丈の青春物語

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   主人公の高校生たちの素人バンドの名は「ビギニング」だが、名前から分かる通りこれは「BEGIN」からの発想。中江監督が石垣島出身の人気ミュージシャンBEGINのエッセイ「さとうきび畑の風に乗って」に原案を得て、独自の脚本に仕立てた。

©2007 「恋しくて」製作委員会
©2007 「恋しくて」製作委員会

   「恋しくて」も彼らのヒット曲なのはお気づきの通り。エンディングの「ミーファイユー」は彼らが映画の為に書き下ろした曲だ。舞台は沖縄本島から南に下った石垣島。音楽の神様に祝福された島だと言われ、島民たちの民謡や伝統の歌、ジャズやロックが溢れている。本島は観光ブームで変貌しているが、石垣島ではゆったりと優しい暖かな時間が過ぎて行く。

   監督の中江裕司は京都生まれだが、80年に琉球大学に入学以来、沖縄に住み着いているから、沖縄人だ。琉球ミュージカル「ナビィの恋」のヒットで注目された。セイリョウ役の石田法嗣(「戦国自衛隊1549」など)はキャスト中、ただ一人東京生まれで、方言のセリフがうまく言えたか気にしている。栄順の東里(アイザト)翔斗、加那子の山入端(ヤマノハ)佳美、マコトの宜保(ギボ)秀明、浩の大嶺健一は何れも沖縄生まれで、3,500人のオーディションで選ばれた高校生。沖縄のおばあちゃん、平良とみがセイリョウの祖母役で出ている。BEGINのメンバーもエンドロールに顔を出す。

   石垣島の高校。新入生の加那子(山入端)は、幼馴染の栄順(東里)に出あう。加那子の兄セイリョウ(石田)が何となしに口にした「バンドやるどー」の掛け声に集まった面々。栄順が歌、幼馴染のマコト(宜保)がギター、セイリョウがドラム。加那子も歌のパートだが、いつも栄順に歌わせる。彼女の父母はともに音楽家だが4歳の時に父が居なくなりそれから歌えなくなっている。バンド名は「セイリョウズ」。高校の文化祭を目指して牛小屋で練習が始まる。最初はいやいや歌っていた栄順だが、歌う喜びに自分の姿を見出す。加那子は音楽以外に空手部で活躍し、地区予選の出場も決まる。

   1年上のセイリョウがリーダーで、次々と突拍子も無いアイディアを出して物語を引っ張る。牛小屋での糞まみれのリハーサルは笑える。文化祭のオーディションはレベルが高くバンドは落選するし、突然家出をした父親を探しに奄美大島を訪ねて、その地で亡くなった父親の遺骨と遺品の楽譜を持ち帰るストーリーも破天荒。文化祭が中止になると他の高校に呼びかけて「八重山バンド天国」のコンテストを開くのも楽しい。

   セイリョウに思わぬ悲劇が待っていたり、バンドは東京で大きな花を咲かせたり、加奈子と栄順のロマンスが生まれたりと、波乱万丈の青春物語だ。BEGINの曲に乗って涙を流し笑い転げて心地良く見終わる。母でジャズ歌手役の与世山澄子が劇中何度も歌う、いやに甘ったるいジャズバラードの「ワンダフルワールド」が石垣島的で可笑しい。おばぁ役の沖縄の顔・平良とみの暖かな笑顔に引き込まれる。

恵介
オススメ度: ★★★★☆
恋しくて
2007年日本映画・東京テアトル配給・1時間 39分・2007年4月14日公開
監督・脚本:中江裕司
出演:石田法嗣 / 東里翔斗 / 山入端佳美
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