「ラストキング・オブ・スコットランド」
アフリカの暴君アミン、自在に演じてアカデミー主演男優賞

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   字幕の戸田奈津子さんが、スコットランドの話だと思って引き受けたらアミン大統領だったのよ、と笑っていた。原題「スコットランドの最後の王様」の舞台はアフリカのウガンダ。残虐の限りを尽くした暴君イディ・アミンを若いスコッティッシュの医者を通して描く。植民地時代のスコットランド軍に属したアミンは、キルトのスカートを穿くなどスコットランドに憧れ、「最後の王」と自称した。アミンに扮するフォレスト・ウィテカーが先ごろのアカデミー主演男優賞を黒人で4人目に授与されたのも話題を呼んだ。

   原作はウガンダに住んだことのあるジャイルズ・フォーデンのベストセラー小説。実在のアミンと架空の若い医者との交流を描く。脚色はピーター・モーガンとジェレミー・ブロック。アミンに絡む若い医者の役は「ナルニア国物語」のジェームズ・マカヴォイ。アミンが寵愛した第2夫人に「レイ」のケリー・ワシントン。監督は「ブラック・セプテンバー」でアカデミー長編ドキュメンタリー賞を獲ったケヴィン・マクドナルド。劇場映画は初めてだが、記録映画のベテランらしい実話の後追い画面は迫力がある。

   1971年スコットランドの医学校を卒業したニコラス(マカヴォイ)は無責任にも地球儀を廻して自分の任地を決める。そこはアフリカのウガンダ。ニコラスの到着したその日こそ、ボクシング・チャンピオンから軍人になりクーデターで政権を収めたイディ・アミン(ウィテカー)が大統領に就任した日だ。故国の先輩医師の病院手伝いをしていたニコラスは近くで偶然アミンの自動車事故に遭遇し、怪我の手当てを手際良くしたことで大統領の主治医に取り立てられる。医療ばかりか政治的な相談も引き受け、アミンのフランクでユーモラスな人柄に惹かれたニコラスは、大統領と共に新しい国造りの仕事に情熱を燃やす。しかし抵抗勢力に怯えるアミンは、ニコラスの知らない所で大量の粛正や虐殺を行っていた。

   アカデミー賞を獲ったウィテカーの演技はさすがだ。茶目っ気たっぷり、ユーモラスで、夫人(ワシントン)とその息子を愛する家庭人かと思えば、疑心暗鬼の孤独な独裁者。挙句の果ての狂気と愚行。歴史に残る大量殺戮の冷酷な命令者。アミンの複雑な実像を、ウィテカーは縦横に演じて見せる。映画のロケは現大統領の許可を貰い、そのウガンダの実地で行われた。物語の舞台となる国会議事堂、ムラゴ病院、そしてクライマックスのエンテベ空港が実際に使用出来たことでリアリティを感じさせる。ハイジャックされたエール・フランス機の人質の客に紛れてのニコラスの脱出劇など迫力満点。前半ののんびりした暖かいムードから一転、狂気と恐怖の連続になる展開でドラマは盛り上がる。

恵介
オススメ度: ★★★★★
ラストキング・オブ・スコットランド(THE LAST KING OF SCOTLAND)
2006年アメリカ映画・20世紀フォックス配給・2時間05分・2007年3月10日公開
監督:ケヴィン・マクドナルド
出演:フォレスト・ウィテカー / ジェームズ・マカヴォイ / ケリー・ワシントン
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