日曜コラム:「テレビ局だのみ」映画会社の今そこにある危機

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   先週は邦画各社がそれぞれ好成績の決算を発表したことを伝えた。中でも東宝は純利255億円、前年比+7%と絶好調だ。皆さんは東宝が映画を製作して利益を稼ぎ出していると思うでしょう。違うんだな、これが。全部TV局製作映画の配給で儲かっているのだ。

「不動産会社」になってしまった東宝

   東宝はいつからか映画を作ることを止めてしまった。映画不振の60年代から自社の映画スタッフを始め、俳優たちとの契約を打ち切り、映画は外部の製作会社に作らせてその配給に専念する。配給といっても、その頃はどんな映画もTVに押されて儲からない。そこで昔からあった映画館をドンドン潰して高層ビルを建てて賃貸した。土地ブームとバブルで生き延びるどころか好景気の余波で大もうけをした。砧の撮影所は切り売りして見る影も無い。東宝は映画会社ではなく不動産屋なのだ。

   しかし東宝は未だ撮影所というものを持っているから良い。アメリカから弁護士を辞めて呼び戻され、映画は知らないが経営を知っている社長を戴く松竹はあの大船撮影所を全部売り払った。広大な跡地は今やスーパーにデパート、それに女子大のキャンパスだ。大船は遠すぎる。近くの木場に新しくて素晴らしい撮影所を作ってやる、と社長は労組に約束してかなりの年月が経つが、何も起こっていない。

   愚直なまでに映画作りにこだわったのは東映。だから一番経営が苦しいのかも。京都東映の太秦撮影所はちゃんとその姿を留めているし、客引きのちゃんばらの見世物をオープンセットでやっている。

TV局製作映画、「大宣伝」で駄作なのに大ヒット

   邦画各社が映画をアウトソーシングしたので、我も我もと映画好きが映画を作り出したが、ロクなものが出来ない。そこで任せとき、と現れたのがTV局。

   フジTVの亀山千広プロデューサーが登場する。TVと映画の境界線を越えて来た。「踊る大捜査線」「ナースのお仕事」「海猿」「大奥」「アンフェア」・・・。他局も続けとばかりに「TRICK」「ケイゾク」・・・。自信をつけたTV局プロデューサーは、TV演出家にTV脚本家を使って映画を作り出す。「愛の流刑地」「千年の恋」「明日があるさ」「ラブレター」「UDON」。。。TV局は自社の無料スポットを番組に挿入して大宣伝をする。だから当る。

   昨年のキネマ旬報選出「日本映画ベスト10」を見てみよう。

   1)フラガール 2)ゆれる 3)雪に願うこと 4)紙屋悦子の青春 5)武士の一分 6)嫌われ松子の一生 7)博士の愛した数式 8)明日の記憶 9)かもめ食堂 10)カミユなんて知らない。

   この中にTV局主導で製作した映画はTBSの「嫌われ松子の一生」だけ。亀山氏率いるフジ製作映画は皆無。昨年の「海猿」「ゲド戦記」など興行成績トップの作品群は1本たりともベスト10に入っていない。このように大部分のTV局製作映画は質の良くない駄作なのだが、製作するTV局のマスの無料スポットやPRのお陰で、大量の観客を劇場に足を運ばせ興行成績は数十億円にもなり、多額の利益を局と配給の邦画各社にもたらす。上がってナンボの興業の世界、勝てば官軍、質なんて問題じゃない、金を稼げれば良いのだ、という姿勢が見え見え。邦画各社はかくしてTV局におんぶに抱っこ。自分で良い映画を作ろうという姿勢はとっくに捨ててしまっている。

   だが考えて欲しい。日本映画の将来のことを。つまらない映画を見てしまった観客が映画離れを起こしてしまうことを。日本映画の絶頂の今こそ、日本映画の危機なのだ。

恵介
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