「毛皮のエロス」
奇形の被写体を求めて 女流カメラマンD・アーバスの変身

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   従来の写真の概念を革命的に変えたと言われる女流カメラマン、ダイアン・アーバス。彼女の保守的な環境から抜け出す足跡を辿った伝記映画だ。フリークス(奇形の人々)専門で、大男だとか、同性愛者、シャム双生児とか、この映画の隣人のように全身にゴリラのような毛に包まれた多毛症の男だとかを撮り続けるカメラ。

©MMⅥ NEW LINE CINEMA PICTUREHOUSE HOLDINGS,INC./HBO PICTUREHOUSE HOLDINGS,INC.ALL RIGHTS RESERVED.
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   1923年生まれのダイアンは18歳でファッション写真家のアランと結婚する。夫と共同で作り上げた「ヴォーグ」や「グラマー」の誌面を飾る綺麗綺麗な写真に飽きたダイアン。1957年にユダヤ人の保守的な家庭の主婦を脱却して、大胆な被写体を求めるカメラマンに変身するのだ。

   監督はスティーヴン・シャインバーグ。前作「セクレタリー」で自傷癖の女性がボスのセクシュアルハラスメントから脱却し自立する姿を描いた。ここでも箱入り娘が保守的な家庭の主婦に納まるが、突如目覚めて自分の世界を求めるテーマを扱う。脚本は「セクレタリー」でシャインバーグと組んだエリン・クレシダ・ウィルソン。女優から脚本家に転身した変り種。パトリシア・ボズワースの伝記小説を原作としている。主演は「めぐりあう時間たち」でのアカデミー賞女優ニコール・キッドマン。でもニコールの映画は日本では皆ずっこけるんだよなー。何か彼女の冷たい感じが駄目なのかも。相手役はロバート・ダウニー・Jr.。芸能一家に生まれ92年の「チャーリー」でアカデミー候補になるがその後麻薬漬けで治療に専念していた。リハビリで復帰したが、フリークの役はぴったりだ。真面目な夫アランを演じるのは「イン・グッド・カンパニー」のタイ・バーレル。

   1958年のNY。裕福な毛皮商人たちが、毎年開かれるショーのために「アーバス・ファミリー・写真スタジオ」に集まって来る。ダイアン(キッドマン)にとっては憂鬱な日だ。夫アラン(バーレル)のカメラ助手から舞台裏のモデルのスタイリスト、そして何よりも招待客のもてなしまでやらされるから。ショーの当日、同じアパートの上の階に引っ越して来た男がいる。帽子とマフラーと奇妙なマスクで顔の大部分を覆っているが異様に鋭い目がダイアンを捉える。隣人ライオネル(ダウニー・Jr.)との出会いだ。この日以降ダイアンは階上に聞く足音や音楽などに興味を持ち、ライオネルに会おうとする。彼が何かを秘めていると感じて。

   ダウニー・Jr.の全身毛で覆われた裸体に驚く。見事に毛が生え揃っている。顔の輪郭と目で彼と分かる。「この映画はダイアンの忠実な伝記映画ではない」とクレジットしているようにかなり事実を歪曲しているが、何故綺麗な写真で成功しているダイアンが気持ちの悪いフリークスの世界に飛び込んで行ったのか?その謎を追究している。

   最後のシーン、ヌーディストキャンプでヌードにならなければ写真を撮らせないと言われて裸になるダイアンが画面に登場しないのは残念。ダイアン愛用の二眼レフのローライフレックスは筆者も子供時代に愛用していたカメラで懐かしい。

恵介
オススメ度: ★★☆☆☆
毛皮のエロス ダイアン・アーバス 幻想のポートレイト(Fur-An Imaginary Portrait of Diane Arbus)
2006年アメリカ映画・ギャガ配給・2時間2分・2007年5月26日公開
監督:スティーヴン・シャインバーグ
出演:ニコール・キッドマン / ロバート・ダウニー・Jr.
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