「監督・ばんざい!」
笑えないギャグばかり 巨匠タケシの支離滅裂映画

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   ある日の午後、デイヴィッド・リンチの訳の分からない「Inland Empire」を見て頭が混乱している直後に、それに輪をかけた「どーしようもない」映画を見てしまった。たけしの「監督・ばんざい!」だ。

(C)2007『監督・ばんざい!』製作委員会
(C)2007『監督・ばんざい!』製作委員会

   「HANA-BI」でベネチア国際映画祭の金獅子賞を受賞しすっかり「巨匠」になった北野武(監督は北野武で役者名はビートたけし)。「菊次郎の夏」も優れた作品だったし「座頭市」などは勝新以外の新しい市像で見る者を感心させたが、「DOLLS(ドールズ)」は思いだけが籠もって映像に具現出来なかった。そしてこの作品は13本目に当る。

   映画の冒頭は企画会議で、次に何を作るべきか論議をしている。「ギャング映画」が一番性格に合うし簡単だが、外国でのインタビューでもう作らないと宣言してしまった。じゃあ日本人は「小津安二郎」だと人情劇を撮ろうとするが任じゃない。ならば「オールウェイズ」で今、流行の「昭和30年代映画」だ、自分の子ども時代だから何でも知っていると、いろんなエピソードの積み重ねが展開する。

   これがどれを取っても実につまらない愚にもつかないエピソードばかり。ギャグ満載なのだが少しも笑えないし、おまけに使い古しのものばかり。最初から最後まで等身大のタケシ人形を登場させたり、スピーチでお辞儀してマイクにおでこをドンとか、亀にお手とかお座りと言ってみたり、空手指導で板も割れずに並み居る生徒たちを前にドジばかり。喫茶店「凱旋門」での待ち合わせにパリ凱旋門に飛んでみたり(これでパリロケをやっている)、機能しないロボットで警察を襲ったり。笑ってやろうと待ち受けているのにサムイギャグばかり。

   キャストはたけしが全編を通して顔をだすが、エピソード毎に江守徹、岸本加世子、内田有紀、松坂慶子、木村佳乃、鈴木杏、吉行和子、宝田明、藤田弓子と錚々たる役者が名を連ねている。書き忘れちゃイケナイ、タケシ人形の出演シーンが一番多い。

   タケシの映画は何かしらコンセプトがあった。貫くテーマがあったが、これでは支離滅裂、それが狙いなのかも知れないが観客不在もいいところ。金払って来る客に失礼だろう。タケシ映画は総て見ているが、これは最低の作品。このスランプから早く立ち直ることを祈るタケシファンの私である。

   ここまで書いたところにカンヌ映画祭60周年記念の短編上映企画「TO EACH HIS OWN CINEMA」のニュースが入って来た。「劇場」を題材に、上映時間3分の作品を各国から選出した35組の映画監督が持ち寄ったと言う。ロマン・ポランスキー、アッバス・キアロスタミ、ヴィム・ヴェンダース、ケン・ローチ、チャン・イーモウら名監督に混じってたけし監督作品が入っていると。6月1日からの公開にこの短編が併映されると言うが、本編の汚名返上になれば良いと願う。

恵介
オススメ度: ★☆☆☆☆
2007年日本映画・東京テアトル・オフィス北野配給・1時間44分・2007年6月2日公開
監督・脚本・編集:北野武
出演:ビートたけし / 江守徹 / 岸本加世子
公式サイト:http://www.office-kitano.co.jp/banzai/cover.html
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