「そのときは彼によろしく」
長澤まさみの「ぎこちないキス」が切なくて

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   死んでも見えない絆で強く繋がっている男女を描いて大ヒットとなった「いま、会いにゆきます」。その原作者・市川拓司のロングセラー小説を映画化した「そのときは彼によろしく」も、死者と生きている人との交流を描く作品だ。

(C)2007「そのときは彼によろしく」製作委員会
(C)2007「そのときは彼によろしく」製作委員会

   先週封切られたが、土日2日間で動員僅か6万4千人、興収は1億にも届かない8千900万円。全国東宝系239スクリーン、と意気込んで拡大公開されたにしては出遅れの感じは否めない。もうこの手のロマンスものは流行らないと肝に銘じた方が良いかも知れない。不振のもう一つの原因は東宝映画主導の作品で、無料CMや無料PRを公共の電波を使ってバンバン流してくれるTV局製作映画では無いということだ。東宝は映画の作り方も忘れてしまったようだ。

   子供の頃夢を語り合った仲間たちに約束した店「トラッシュ」をようやく開店した遠山智史(山田孝行)。水草(アクアプラント)の専門店だ。その「トラッシュ」にある日、トップモデル森川鈴音(長澤まさみ)が訪ねて来る。店員の夏目(黄川田)が、気付かない遠山に教える。鈴音は遠山の幼馴染・滝川花梨だったのだ。二人にはもう一人の友達がいた。画家の夢を持っていた五十嵐佑司(塚本高史)だ。13年前、仲の良かった3人は毎日学校帰りに、廃車になった乗り合いバスを根城に遊びながら、将来の夢を語り合った。両親の顔を知らない花梨は、二人の男の子の希望に沿って「水草店の看板娘と画家のモデル」が夢と語っていた。遠山と花梨が再開してしばらく後、行方不明の佑司の居場所が分かる。彼は交通事故に会い病院で昏睡状態だった。そして花梨の寿命もカウントダウンしていることを遠山は知ることになる・・・。

   「世界の中心で、愛を叫ぶ」「涙そうそう」など泣かせの女王・長澤まさみがヒロイン。この手のドラマにピッタリの女優だが、今回はなかなか感情移入が出来ない。もう観客に免疫が出来ているかも。遠山役には「手紙」で泣かせてくれた山田孝之。五十嵐は「涙そうそう」の塚本高史。何れも若手だが、泣き映画のベテランたちだ。遠山の両親は、母親に和久井映見、父親に小日向文世。父親は医者として花梨の病状を息子に伝える。その他に小学生時代の3人の子役の演技が光る。監督は「白夜行」など多くのTVドラマを手掛け、今回が映画デビュー作品となる平川雄一朗。柴咲コウが女優では無く歌手として、歌詞も書き下ろした主題歌「プリズム」を唄う。

   遠山が夢見た水草(アクアプランツ)の店とは珍しいが、鑑賞用に大きな水槽に入れられて、下から照明で煽られ、揺れる緑の水草は美しい。なるほど現代人の「癒しの空間」として有用だ。確かに商売として成り立つだろう。映画の中の店で30もの大きなガラスの箱に水草が蠢く様子は「まるで湖の底にいるみたい」との花梨のセリフに同感だ。

   子供時代に仲の良かった3人の一人が死ぬ話は、V6の井ノ原快彦と岡本綾の「天国は待ってくれる 」で少し前に松竹映画で公開されたばかり。ストーリーが似ているが、出来は東宝のこの作品の方が良い。

   「私には時間が無い」残された僅かな時間に焦る花梨。子供の時から憧れ続けた遠山との恋の決着をつけたい。電車で町を去る遠山を追いかける花梨の思い出。初めてのぎこちないキス。死に行く花梨の痛い程の想いは伝わって来る。「そのときは、彼によろしく」と。

恵介
オススメ度: ★★☆☆☆
そのときは彼によろしく
2007年日本映画・東宝配給・1時間54分・公開・2007年6月2日公開
監督:平川雄一朗
出演:長澤まさみ / 山田孝之
公式サイト:http://www.sonokare.com/
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