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日曜コラム:米国では「4.0」じゃなかった「ダイ・ハード」

   同じ映画でもアメリカの原題と邦題が違うことはよくあるが、それだけでなく、原題として表記されている英語のタイトルとアメリカでのタイトルが違う映画もあるのをご存知だろうか? 例えば筆者の経験では、81年にNYで「THE ROAD WARRIOR」という勇ましいタイトルで劇場に飛び込んだら、日本で見た「MAD MAX2」だったという苦い経験がある。オーストラリアをはじめ世界中が「マッド・マックス」だったが、それほど「1」がヒットしなかったアメリカは勝手に違う名前にしたのだ。

日本では「ダイハード4.0」(左)だが、米国の原題は「LIVE FREE OR DIE HARD」だ
日本では「ダイハード4.0」(左)だが、米国の原題は「LIVE FREE OR DIE HARD」だ

   あるいは古い映画だがリメイクもある「ロンゲスト・ヤード」という作品。バート・レイノルズ主演、看守と囚人のフットボールの試合を描いた映画だ。アメリカタイトルは「THE MEAN MACHINE」(意地悪な機械)という。フットボールの世界では選手にRefrigirator(冷蔵庫)とか頑丈で壊れないようなニックネームをつけるのは習慣で「マシーン」と言えばピンと来る。ところがアメリカン・フットボールを知らない国では何のことか分からない。フットボールはヤードの距離を獲得するゲーム。だから「最長距離」(ロンゲスト・ヤード)なら理解できる。

   最近では、いよいよ先行ロードショウが始まって好調な出だしを切った「ダイ・ハード4.0」もアメリカのタイトルと日本のタイトルが違う。気付いている人もいるかも知れないが、日本では作品のタイトルが「ダイ・ハード 4.0」なのにアメリカ本国では「LIVE FREE OR DIE HARD」になっている。「4.0」は4作目ということ以外にサイバー関係を連想させる意味合いで4の後に「.0」を付けた。

   LIVE FREE OR DIEHARDとは、アメリカの北西部でカナダと国境を接するニュー・ハンプシャー州という小さな州にゆかりがある言葉だ。ニュー・イングランド地域にあり州として合衆国に加わったのが9番目というから歴史は古い。LIVE FREE OR DIE(自由に生きるかさもなくば死ぬか)はイギリスと戦った独立戦争の時、ニュー・ハンプシャー出身のジョン・スターク将軍の演説の有名な言葉だ。1945年に州高等裁判所はニュー・ハンプシャー州のモットー(標語)として採用した。だからアメリカ人は皆この言葉を知っている。DIE の後にHARDをつけてタイトルにしたわけだ。国家機能をマヒさせるサイバーテロに真っ向から戦いを挑むジョン・マクレーン刑事の心意気を表している。

   このように原題がアメリカ人の良く知っている言葉でも世界的には余り知られていない場合には、どの国の人でも分かるタイトルに変更するという例はいくつもある。

   余談ながらDIE HARDの由来や意味をご存知だろうか? もともと原作になったロデリック・ソープの小説名は「Nothing Lasts Forever」(物事は永遠に続かない)だが、それを一言で言うとDie Hard。「粘り強い」「なかなか死なない、消えない」「執着する」の意味だ。会話でもOld bad habits die hard.(古い悪い習慣はなかなか止められない)などと良く使う。なかなか死なないからDie Hard。これは史上に残る名タイトルだと思う。