「客への媚びは邪魔になるだけ」本当にそうなのか?

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   日本屈指のソムリエ、とは今回のプロフェッショナルを言うのだそうだ。ソムリエ・佐藤陽一。2005年のソムリエコンクールで日本一になった男。私のワインに関しての知識は「ブルゴーニュって何?」クラスだが、お酒のプロに対しては一種の憧れに近い感情がある。だから今回の放送はちょっと楽しみだった。

   佐藤は六本木にあるワインレストラン「マクシヴァン」でオーナーを務めるかたわら、ソムリエとして毎日サービスをしている。その接客はあっさりしたものだ。笑顔を振りまくことも、媚びることもない。ソムリエバッジすら付けてなかった。客を喜ばすのは、あくまでもワイン。媚びはただ邪魔になるだけ、というのが佐藤の仕事に対する流儀だ。

   番組ではそう紹介していたが、若干疑問を感じた。自分がもし客だったら……レストランの価格帯にもよるが、私なら料理やワインと同等の水準のサービスを期待する。給仕にはスマートな接客を求めるし、ソムリエには知識と同時に気の利いたトークでいい気持ちにさせてもらいたい。

   そんな思いをよそに、番組は続く。話は佐藤がソムリエになりたての頃。フランスで修行を積んだ後、日本の高級レストランで働いていた時の話。佐藤は恵比寿ガーデンプレイスにあったお城のレストラン「タイユバン・ロブション」(現在はジョエル・ロブション)や「エノテーカ」等、一度は行ってみたい名店でソムリエとして働いていた。時はワインブーム。客の望むままに人気産地の高級ワインを開け続けた。そこではきっと客に対して笑顔を振りまくようにサービスしていたに違いない。

   しかし、人気店は客が多い。一人一人の客とじっくり向き合う余裕がない。そこで「自分にとって理想のサービスとは何か」と自問するようになったという。そして、佐藤が出した答えが、前述の「客を喜ばすのは、あくまでもワイン」だったわけだ。

   これまで私は、サービスとは何かなんて考えたこともなかった。さまざまな試行錯誤を重ねてきた「先輩」が導き出した「サービスに対する答え」には、きっと今の私なんかが思いもつかない意味が込められているのだろう。

NHK プロフェッショナル 仕事の流儀 「熟成の向こうに、極上がある~ソムリエ・佐藤陽一」(2007年6月19日放送)
文   慶応大学・がくちゃん
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