「幸せの絆」
こういう涙、涙の絶品こそ東宝の映画館でやってほしい

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   素晴らしい中国映画だ。女性監督、ウーラン・ターナーの「幸せの絆」(原題:暖春)。全く期待してはいなかったが、始まると主人公の少女・小花の純真さ、あどけなさ、家族の愛に憧れるいじらしさに全編を泣きとおす。


   80年代末の山西省、水飲み百姓の貧乏な山村。そこに幼い少女の行き倒れ。村人が集まり少女の処遇でもめている。家族が多いから、もうじき子供が生まれるから、貧乏で余裕が無いからなどと言い訳して誰も手を挙げないが、村で一番貧しい老人(ティエン・チェンレン)が引き取ると言い出す。少女は隣村の子供で小花(チャン・イェン)といい7歳。両親を早くに亡くし、育ててくれた祖母も半年前に死んで若夫婦に引き取られたが、虐待をされているので帰りたくないと。老人には息子夫婦がいるが、他の村人と同様に、やっかい者を連れ込んだ老人と小花には冷たい。食事も差別されるので、二人は自分たちの住む別棟に釜戸を作り自炊を始める。息子夫婦の冷たい目を避け、助け合いながら生きて行く二人の様子をカメラは追う。

   息子は自分の父親だけに遠慮しているが、嫁は強引に小花を隣村に送り返そうとしたり、養子縁組を勝手にしたり。その度に小花の抵抗にあい老人が助けるが、嫁は強い強い。中国では家父長権は女性が握っているのか、どの家でも夫は妻に怒鳴られ扱き使われているのが面白い。しかし正直で純真な小花を村人たちが理解し、出来る範囲で援助をし始めるところから映画は盛り上がる。

   村人たちの優しさ。貧しい中から米、粟、コーリャン、玉子、小銭を持ち寄り、一張羅の小花に着古した服をあげ、老人が倒れて学校に行けなくなった小花を助ける。中国人って優しいのだ。それが何故日本人と見れば石を投げ、領事館に玉子をぶっつけ、南京大虐殺30万人などと大嘘をつくのだ!(ようやく対抗する議員連盟が出来た)。ここの村人と都市の大衆とは質が違うのかも知れない、と心を鎮め直して映画を追う。

   こんな涙、涙の絶品は当然劇場公開されるが、その小屋が問題なのだ。何と銀座シネパトスで「モーニングショー」のみと。この小屋は行ったことがある人は知っているだろうが、銀座と言っても外れの三原橋の、それもポルノショップなどと並ぶ地下にある。並びにある安い居酒屋の匂いが外へ出ないで籠もって充満している。何よりも地下鉄が通る度に轟轟と音が響き客席が揺れる。2番館のこんな悪環境で正規料金1800円を取るから泥棒並みの小屋だ。そんな所で朝だけの公開だと。

   今や日本には3000を越すスクリーンがある。大部分を東宝が保有し、残りを松竹や東映、東急や外資系シネコンが占める。昔のATGや名画座などのアートハウスが消滅してこのような佳作を上映する館が無い。東宝では「TV局製作大作」映画が全国300館近くで公開されるが、2、3館で良いからこういう作品にも門戸を開いて欲しい。

恵介
オススメ度: ★★★★★
2003年中国映画、フリーマン・オフィス配給、1時間29分、2007年7月21日公開
監督・脚本:ウーラン・ターナー
出演:チャン・イェン / ティエン・チェンレン
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