「自分の性格を殺す」鬼師にはなれそうもない

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   「鬼師」。そう聞いて、どんな職業を連想するだろうか。"鬼"教師のことか?などとも想像されるが、正解は「鬼瓦を作る職人」。鬼瓦とは、神社や寺の屋根に鎮座する鬼の顔をかたどった瓦で、家屋の守り神として大切にされている。今回のプロフェッショナルはその鬼瓦を作る鬼師・美濃邉(みのべ)恵一だった。

   鬼瓦を作る上で重要なポイントは山のようにある。造形はもちろん、乾燥させる時間や風向き、釜の温度や置く場所などなど……。それらのポイントを一つとしておろそかにはしない。

   鬼師の信念に「魂を写し取る」という言葉がある。過去の「プロフェッショナル」を振り返ってもそうだったが、その作品に自分の魂を100パーセント注ぎ込みたいと思っている人間には、「妥協」という言葉はそもそも存在しない。自分が鬼になるのだ。

   作品に魂を込めるといっても、それは感覚の問題だ。言葉にすることはできない。番組ホスト、脳科学者・茂木健一郎の研究分野でおなじみの「クオリア」の世界だ。クオリアとは、日本語でいえば「質感」のこと。言葉に表せないクオリアをつかんで作品に込めるのが芸術家で、美濃邉もその中の一人なのだ。

   美濃邉がクオリアの世界の仕事をするに際して、大切にしていることはなんなのだろうか、茂木がたずねた。美濃邉はこう答える。

   「冷静に、無の状態で作る。集中してやっている。自分の性格出したらあかんと思いますね。自分の性格を殺してやるということだと思います」

   自分をなくす。簡単にできることなのだろうか。

   「難しい、けど無くさなければいけないんです。いままでその建物に馴染んでいた鬼瓦が、私が自分勝手なことをしたら馴染まなくなる。かわいそうな鬼になってしまいます」

   瓦には自己を表現することはできない。だから鬼師である自分自身は黒子役に徹する。鬼瓦の歴史に自分が関わったという誇りが喜びなのだという。

   だが私個人としては、やはりどこかに思いっきり自分を表現してみたいという思いがある。鬼師にはなれそうもない、か。

    ※NHK プロフェッショナル 仕事の流儀 「人事を尽くして、鬼になる~鬼師・美濃邉惠一」(2007年7月10日放送)

文   慶応大学・がくちゃん
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