「魔笛」
モーツァルトもびっくり!オペラの大胆映画化

印刷

   ケネス・ブラナー監督はシェイクスピア劇を次々と映画化している。監督デビュー作でアカデミー監督賞と主演男優賞のノミネートを受けた「ヘンリー五世」から始まり、「から騒ぎ」「ハムレット」「恋の骨折損」。興業的には成功しているとは言えないが、退屈な古典から現代にも通じる要素を取り上げ、堅実な演出でシェイクスピア・ワールドを具現化し大衆に広めている。

(C)THE PETER MOORES FOUNDATION-2006
(C)THE PETER MOORES FOUNDATION-2006

   1791年ウィーンで初演されたという、ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルトのオペラ「魔笛」。筆者はNYのメトロポリタン・オペラで見たことがあるが、退屈なストーリーだ。時代は古代エジプト。大蛇に追われたタミーノ王子が、夜の女王に仕える3人の侍女に救われ目を覚ます。傍に立っていた鳥刺しパパゲーノを命の恩人と思い込むところから始まるコメディタッチのオペラ。

   ブラナーは舞台を第一次世界大戦のフランス、ソンムの戦場へ入れ替えている。弾の飛び交う塹壕の中でタミーノ(ジョセフ・カイザー)は敵の毒ガスで気絶。夜の女王(リューボフ・ペトロヴァ)はタミーノ救出に従軍看護婦3人を遣わし、毒ガスを一掃する。目を覚ましたタミーノはカナリアを飼育するパパゲーノ(ベン・デイヴィス)が命の恩人と思い込む。夜の女王はタミーノに暗黒卿ザラストロ(ルネ・パーペ)にさらわれた娘パミーナ(エイミー・カーソン)の救出を求める。

   監督・脚本のブラナーの思惑通り、古代エジプトのおとぎ話より、20世紀初頭の戦場でのアクションやロマンスの方が観客の興味を増す。タミーノが女王から魔法の笛を渡され、ザラストロの城に忍び込んでパミーナと出会うロマンスや、二人の愛のための試練など波乱万丈の物語が展開する。

   俳優は総てオペラ歌手。ブラナー監督は「こちらはオペラの初心者、あちらは俳優の初心者」だからお互い謙虚にコミュニケーションが取れたと。映画の中で、序曲からフィナーレまでの全22曲をその順番通り使用する。さすがに感情移入し難い曲もあり、映像化に腐心したとブラナーは語る。例えば戦場に積まれた砂袋が人間の顔になって歌うシュールなシーンだ。今までCGとは無縁だったブラナーも冒頭の激しい戦闘場面では大量のCGの世話になっている。2時間を越えるブラナーの「魔笛」。映画ファンにもオペラファンにも楽しめる作品に仕上がっている。

恵介
オススメ度: ★★★☆☆
魔笛(THE MAGIC FLUTE)
2006年イギリス映画、ショウゲート配給、2時間19分、2007年7月14日公開
監督・脚本:ケネス・ブラナー
出演:ジョセフ・カイザー / エイミー・カーソン / ベン・デイヴィス
公式サイト:http://mateki.jp/
  • コメント・口コミ
  • Facebook
  • twitter
コメント・口コミを投稿する
コメント・口コミを入力
ハンドルネーム
コメント・口コミ
   

※誹謗中傷や差別的発言、不愉快にさせるようなコメント・口コミは掲載しない場合があります。
コメント・口コミの掲載基準については、コメント・口コミに関する諸注意をご一読ください。

注目情報PR
追悼
シニアの健康ライフ
Slownetからのおすすめ記事(提携)

お知らせ

電子書籍 フジ三太郎とサトウサンペイ 好評発売中