「100-1=0」 帝国ホテルのシェフは妥協しない

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   今も昔も、国内ホテルのトップクラスにランクされる帝国ホテル。一度は利用してみたいホテルとして、多くの人がその名を挙げるのではないか。サービス・客室・設備と並んで、もちろん料理も超一流。今回のプロフェッショナルは、その帝国ホテルで総料理長を務める田中健一郎だった。

   帝国ホテルのシェフと言えば、「ムッシュ」の愛称で親しまれた村上信夫氏の名前を思い出す人も多いだろう。私も昔「プロジェクトX」で氏の存在を知り、偉大な料理人だという認識がある。田中はその後継者として、いま帝国ホテルの厨房のトップに立っている。

   田中は、村上氏の時代から定番となっていた結婚披露宴用メニューの一新など数々の改革を行い、成功させてきた。しかし、部下からの反発にあう。ホテルの伝統と"ムッシュ"という偉大な存在。その重みは計り知れない。しかし彼は自ら率先して現場に立ち、背中で部下を引っ張っていったという。

   伝統にあぐらをかいているだけでは絶対に発展などありえない、と私は思う。東京のホテルは完全に飽和状態であるにもかかわらず、海外資本のラグジュアリーホテルが続々とオープンし続けている。それぞれのメインダイニングでは一流シェフが腕を振るい、洗練された空間の中で最先端の料理を食することができる。伝統と格式のあるホテルですら、その中で生き残っていくのは至難の業であるはずだ。きっと帝国ホテルも例外ではない。

   その状況下で国内ホテルに求められているのは、海外の模倣などではないし、過去の栄光にすがりつくだけの間違った意味の「伝統」でもない。田中も就任当時からそれを感じていたはずだ。自分の決断を信じて、部下を導いた彼は正しかった。しかしそれは並の努力ではない。

   彼の信念に「100-1=0」というのがある。妥協を許さず、何か一つでも欠ければそれを認めないということだ。究極の完璧主義者。シェフとしての料理に対する姿勢であると同時に、トップである自分が完璧を求めることにより部下の気も引き締まる。

   伝統を重んじながらも、新しいものを取り入れていく。田中から、サービス業に携わるプロフェッショナルの姿を垣間みた。

   ※NHK プロフェッショナル 仕事の流儀 「名門の味は、気持ちでつくる~ホテル総料理長・田中健一郎」(2007年7月10日放送)

文   慶応大学・がくちゃん
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